システム理論 -アルゴノート-

魔力、魔法に優れた世界と科学技術に優れた世界。決して出遭うはずの無かった二つの地球は粗悪宇宙コピー器タイムマシンにより繋がり、魔法魔力と科学の融合によりアルゴノートシステムが実現した。2つの地球が出遭うはずが無かったようにアルゴノートシステムも完成する事は無かった技術だった・・・。




アルゴノートシステムはかつて、粗悪宇宙コピー機に成り下がったタイムマシーンと並ぶ人類の希望だった。このシステムが完成すれば空間を膨張させる程のエネルギーを生み出し相対性理論を崩すことなく光の速さを超える事が出来る。つまり、人類は荒れ果てた母星を捨て、何千光年先の別恒星系への移住が可能になるはずだった。




だが人類には恒星間航行船を作れる膨大な資源を核戦争により失っていた。




魔力エナルギーとの遭遇によりアルゴノートシステムを稼働させるにたるエネルギー源を手に入れた人類には皮肉な話だ。




システムを実現しても利用する事が出来なくなった不運のシステム。アルゴノートは諦めの悪い少数だけが研究を続けていた・・・。理論根本は原子核。この世の物質は全て原子核から出来ている。人間でさえも主成分を炭素とした原子核で構成された物質の集合体でしかない。




万物を構成する原子核の中心は全てアップチャーム、ダウンチャームなどの3種類のクウォークが結合し、ひとつの原子核を構成している。たった3個の素粒子が全てを構成する根源。




もし、原子核を構成しているクウォーク結合を何らかの方法で解除したのなら原子核は、ほんのひと時だけ光を発し消滅する。原子核結合を無効にして物質を光に変えてしまうのがアルゴノートシステム。




鉄、カーボンナノチューブ合金などの金属は元より土でも空気でさえも、たとえウルツァイト窒化ホウ素でも・・・例えが悪いな。原子核から出来ているものは全て、硬い?柔らかい?


そんな事とは無関係に、どんな物質でも、光に変換してしまう。




しかし原子核をひとつ光に変える為に必要なエネルギーは、人類全盛期時代の大都市の一日分。恒星間飛行を諦めた人類には、なんの役にも立たないのだが・・・。ひとつだけ有効な利用法があった。




兵器に使用すること。もしも、このシステムを小型化して刃先に仕込む事が出来れば・・・。




刃先に触れた物は全て、光に変換されてしまう。触れた物が全て光になるなら、この世の物は全て何の抵抗もなく、2つに切り裂かれる事になる。光を放ちながら万物を切り裂くシステム。神話での話じゃない。


現実だ。刃先に触れた物は全て光になり消えていく、これがアルゴノートソード。


かつて、2本だけアルゴノートソードか作られた。




               ******




義経「説明は以上だ。何か質問は?」




ボルツ「ああ。おおよそは解ったつもりだが、繰り返す。


    始めに厚さ4メートルの強化コンクリートを切る。


    次にウルツァイト窒化ホウ素合金と


    カーボンナノチューブ合金どれも厚さ20㎝を切る。


    それで、実験終了だな。」




義経「そうだ。呑み込みがいいな。」




ボルツ「バカにするのは辞めろ。人間。


    それで、発動と終了はどうすればいい。


    こんな、ちゃちいソードでは


    何も切れないように思うがな。」


ボルツはアルゴノートソードで特殊コンクリートを叩きながら質問する。アルゴノートソードは発動していなければ普通のソードと変わりはしないから疑問に思うのも無理はないだろう。





義経「魔力をその剣に注ぎ込めばいい。


   システムが稼働すれば剣の根元にあるクリスタルが青になる。


   クリスタルが青の時はアルゴノートシルテムが稼働中で


   魔力を絶てばクリスタルは透明になりシステムはダウンする。


   ただし、クリスタルを青にするには巨大な魔力が必要だがな。」




ボルツ「青に変わらなければ、俺の魔力が足りないと?」




義経「そうだ。」


馬鹿にされてると思ったのだろう、力一杯にソードを握りしめ魔力を注ぎ込み始めるボルツ。


だが一向に青に変わる気を感じないボルツは




ボルツ「色が変わらないな。失敗じゃないのか?」




義経「魔力が足りないんだ。出来ないなら他の候補者にやらせるが・・・どうする?」


実験にはボルツの他に3人の強力な魔力の持ち主をよんでいる。ボルツがアルゴノートを発動出来なければ交代で発動実験をしてもらうのは勿論のこと、彼らにはお互いにライバル意識がありその相乗効果も狙って同席させている。




ボルツ「なめられたもんだな。少し離れていてくれ。


    魔力を放出する。この剣、魔力が強すぎて崩壊しないだろうな?」


やはり同席させたのは正解だったようだ。




義経「心配するな。剣のつかの部分にもう一つクリスタルがあるだろう。」




ボルツ「この透明な奴か?」




義経「多すぎる魔力はそのクルスタルに吸収される。万が一に魔力が逆流した時もそのクリスタルが


   魔力を吸収してくれる安全装置付きだ。」




ボルツ「全く、人間は抜け目がないね。じゃあ、始めるぞ!離れろ。」


薄っすらと全身を赤く光らせ魔力を注ぎ込むボルツは唸り声をあげながら苦悶の表情を浮かべ全身に力が入って入るのだろう、小刻みに震えているがアルゴノートソードに変化は一向に現れない。人型魔族よりも一般的に魔力量の多い半獣魔族でもシステムを稼働させる程の魔力は無いのか・・・。


そんな考えがよぎった刹那、ボルツが歓喜の声をあげた。




ボルツ「クリスタルが青に変わったぞ!・・・だが?これでいいのか?


    他に何も変化が無いのだが・・・。」




義経「軽く振ってみてくれ。」


アルゴノートソードを一振りしたボルツは感嘆の声をあげた。




ボルツ「おお!光った。これがアルゴノートか!」




義経「成功だな。今の光は大気を構成している原子核が光に変換されたんだ。


今度は実験材料を切ってくれないか。力を入れないでゆっくりとだ!


   理論上は触るだけでどんな物でも簡単に切れるはずだ。」




力一杯に振り回そうと思っていたボルツは、大丈夫なのかと素振りで意志を伝えるが、私も大丈夫と素振りで伝える。少し落胆した様子を見せ、つまらなそうな顔をのぞかせながらも素直に従ったボルツは何の抵抗も無く、さらっと切れる強化コンクリートを次にカーボンナノチュウブ合金、ウルツァイト窒化ホウ素合金と切り刻んでゆく。どれもなんの抵抗も無くあっさりと光を放ちながら2つに切れる。切り裂かれるのではない。ただ切れるのだ。ナノチュウブ合金をまるで野菜のように賽の目切りにしたボルツは驚愕の余り


暫く声も出さずに金属を切り刻んでいた。




ボルツ「なんだこれは?ただ動かすだけで切れる!俺は本当にナノチュウブ合金を切っているのか?


    野菜を切る程の抵抗も感じない・・・どうなっているんだ!」


同席した魔族も驚きの色を隠せないらしい。駆け寄り、切り刻まれた金属片とアルゴノートソードを見比べたが信じられないようすで、それぞれに金属が本物かどうか触り品定めしてから、もう一度ウルツァイト窒化ホウ素合金を切ってくれとせがんでいる。リクエストに応え全く抵抗を示さずに光だけのこし2つに切れる合金・・・。そろそろ実験を終了させようと思った矢先に、ソード自体が輝きだしボルツが悲鳴をあげる。




ボルツ「魔力が吸いあげられる!手が離れない!」


アルゴノートが魔力を吸い上げる?・・・ユーザーの意志に反して強制的に吸い上げているのか?


慌てた魔族がアルゴノートをボルツから引き剥がそうと助けに入るが、まるで感電しているようにボルツに触れた瞬間に張り付いてしまった。


感電・・・逆だ!吸い上げられているんだ。ボルツに吸着した全員が魔力を吸い上げられているんだ。




アルゴノートシステムが魔力を欲したのか?そんな・・・あり得ない。




為す術なく呆然と立ち尽くす・・・ほんの数秒だったがアルゴノートは魔族4人分の魔力を全て吸い尽くしボルツの手から離れ落ちた。驚くことに床に落ちたアルゴノートソードは光りながら床を突き抜け地中深くに沈んでいった。その後、魔族4人分の魔力を吸い尽くしたアルゴノートソードは発見する事が出来なかった。理論上・・・あくまで推論のいきを脱しない話だが、システム稼働したままのアルゴノートはボルツの手を離れても尚、稼働を続け地下の岩盤を光に変えながら地中に沈み込みマントル対流を超えコアの中心で地球の重力に捉えられているにだろうと考えられている。恒星間飛行を可能にする技術から出来たアルゴノートシステムは数百万度の温度に耐える事が可能だ。地球の中心であるコアの又中心で今も尚、重力に囚われ数千度の温度と想像を絶する重力に耐えながら、使える主人を待っているのだろ。

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ヘイト! Two people of the same name are Hate 穂積蓮 @hozumiren

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