第38話「廃墟で」

「あなたって生きてるの?」


 声の方を振り向くと、白く綺麗なワンピースを着た、ひとりの女の子がいた。


 薄汚れた廃墟の中、その綺麗な服が、とてもアンバランスだった。


「ああ、なるほど」


 と、僕はボソッと言った。


「ねえ、飴持ってる?」


 と、女の子は言った。 だから僕は……


「ないよ」


 と、答えた。


「チェッ」


 女の子はつまらなそうに、足元の小石を蹴った。


「じゃあ僕、行くから」


 僕は、その場から離れた。でも、ちょっと歩いたところで……


「あっ」


 足元に見つけた物を拾って、振ってみた。


カランカラン


 と、音が鳴った。


 なので、さっきの場所へ戻って行った。戻った先には、さっきも見た、薄汚れてて、多分、白かったであろうワンピースを着た、女の子の屍(しかばね)があった。

 

 僕は、足元で見つけた飴玉の缶あけてみた。缶をあけると、ひとかけらの飴玉があった。僕は、それを女の子の、半開きの口の中に放りこんだ。


 そのあと僕は、タバコに火をつけると、足早にその場を去ろうとした。その時、後ろに気配を感じて振り向くと……


 白く綺麗なワンピースを着た、女の子が立っていた。


 どうやら僕は、女の子が探してた物を、見つける手伝いが出来たようだ。なぜなら女の子のホッペは……







 飴玉と笑顔で、ふくらんでいたからだった。


おしまい

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