第34話「正義の味方」

『うわ~変身セットって意外と高いんだあ』


 オモチャ屋さんで、女の子は考えていた。


『でも、弟の為だ!』


 そう決心すると女の子はお店の人に言った。


「仮面ナンダーの変身セット下さい」


◇◇◇


「お前、生意気なんだよ!」


「やっちまおうぜ!」


「わあ~やめてよ~」


 その日も、弟は上級生2人にイジメられて泣いて帰って来た。


「お姉ちゃん、また上級生にやられたよ~」


「何泣いてんのよ!ガツンとやらないからイジメられるのよ」


 と、姉は言った。


「だって上級生だよ!勝てないよ~」


「あのね!ケンカは勝ち負けじゃないのよ。たとえ負けても戦わないといけない時があるの!」


「お姉ちゃんはケンカ強いからいいよ!」


 と、弟は言ってヘソを曲げてしまった。


『はあ~情けない弟だなあ』


 姉はホトホト困っていた。弟をイジメている上級生は姉よりも上級生だが、姉の勝てない相手ではなかった。


『仕方ないなあ』


 姉は、貯金ブタを見つめていた。


◇◇◇


「お前!今日もやっつけてやるぜ!」


「やだよ~やめてよ~」


 また、上級生2人にからまれた弟。その時だった!


「仮面ナンダー参上!」


 塀の上から声がした。


「お前は誰だ!?」


「正義のキックを食らえ!」


 そう言うと、仮面ナンダーに扮した誰かが、上級生に向かって塀の上からキックした。


ガツーーン!


 上級生はぶっ飛んだ。


「あっ!やりすぎたっ」


 仮面ナンダーは気まずそうに頭を2回かいていた。


「これにこりて、もうイジメない事!」


 仮面ナンダーに言われて、もう一人の上級生は必死にうなづいていた。


「ただいま~」


 弟は元気よく帰って来た。


「ずいぶん元気ね!」


 と、姉は聞いた。


「うん!いいことあった」


 弟の嬉しそうな姿に姉は大満足だった。


『あれ!?』


 弟はゴミ箱に見慣れない物を見つけた。

 

 それは……







 割れたブタの貯金箱だったのだった。


おしまい

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