異世界もの 書いてみたけど、なんかうまくいかない
プリンセスたけし
第1話 ファンタジーは突然に
はい、吸ってー、吐いてー。
はい、もう一度。
吸ってー、吐いてー。
はい、終わりましたよ。
では---。
「お疲れ様でした、これで全員終わりました」
ふぅ、と思わず、でたため息は別に悪いものではなく、一息ついた事で出たものだ。
「お疲れ様。じゃあ、これから校長室と職員室に寄ってから、車に向かうので、坂本さんは、先に車に戻っていて下さい」
坂本は、自分が勤めている病院の看護師だ。
まだ20代半ばで、数いる看護師の中では若い部類だ。しかし若いという事は、実務経験は未熟である事が多いのだが、彼女は非常に優秀だ。彼女の採血の腕はピカイチで、一瞬の小さな痛みを感じたと思えば、もう直ぐに終わっており、文句を言う暇がない。また、医師の問診のアシストも的確で、非の打ち所がない。その為、彼女を今日のパートナーに事前に選任してもらったのだ。
それにプラス、彼女は美しい。見た目は可愛い系なのだが、どこか芯の通った強さがあり、それが女性特有の柔らかさを漸減させ、信頼という力強さを増長させている。故に彼女に理不尽に文句を言う人は、よっぽどの間抜けな奴くらいしかいない。それくらい彼女は有能だ。
「わかりました。では、先生は先に言っていて構いません。ここは私が片付けてから向かうように致しますので」
この後、校長室に挨拶に行くが、もしかしたら少し時間がかかるかもしれない。そうなれば、先に言った方が無難だな。
「ありがとう。では、先に言ってくるので、片付けをよろしくお願いします」
「承知しました」
作業を止めて、一度僕に頭を下げるあたり、律儀だなぁと思いながら、部屋を出る。
「確か、校長室はここかな?」
入口に【校長室】のプレートがあるあたり、トラップではない限り十中八九校長室だろう。
「コンコン」 とノックをすれば、小気味の良い澄んだ音が響く。
どうぞ、と扉の向こうから返事が帰ってくる。
「失礼します」
―――――――――
15時30分か、少々話しすぎたか、校長室を後にした後、職員室で、教頭先生と保健室教諭に挨拶をした。なお、学校到着時にも一度保険室教諭とは顔を合わせており、また校内の案内も彼女がしてくれた。
ちなみに彼女は3人の子持ちの美人保険教諭だ。
15時前には診察は終わっていたから、30分も時間を取ったか。
「早く戻るか」
病院所有の車は現在職員用駐車場に置かせてもらっている為、そこへ向かう。もちろん、坂本さんは先に乗り込んでいるはずだ。
職員用玄関に向かって歩いていると、元気の良い声が聞こえてくる。
「マジか」
「マジマジ」
「だったら、今日行かない?」
「んー、私あまり興味ないかなぁ」
「でも一度行っとかないと損だよ」
「俺はサクラちゃんの意見に賛成~」
職員室から職員用玄関に向かう途中に、男子生徒2人、女子生徒2人のグループが生徒玄関前で話している。
この学校は、職員用と生徒用の玄関は近い造りになっているんだな。
そんな事を考えながら、微笑ましく見てると、
「うわっ、なんだこれ!!」
「ここにも、なんで」
「ついてくんな」
「光ってきたぞ、ヤバくね?」
その声が気になり、先ほどの生徒のほうを見ると、
「足元が光ってる…」
思わず足が動いた。
「どうしたんだ、今助ける!!」
その光がどんどん強くなる。
「先生、多分これ、魔法陣だから、無理だと思う」
その女子生徒は、こちらに顔を向ける。悲しそうな表情で。
「そんなこと言うな、くそっ、何とかならないのか」
彼女たちの足元の魔法陣を削って壊そうとしたが、まるで影のように何も手応えがなかった。
「先生逃げてください! そうしないとせ……」
「カッッッ!!」と聞こえそうなほど、、強い光を浴びた後、自分は見知らぬ真っ白い空間に佇んでいた。
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