レトロスペクティ部

炉夜牛029

非公式部活動レトロスペクティ部

第1話 レトルトカレー愛好家、雁夜京子

 暗い部屋に灯りが照らされる。


 暖かいランプの明かりだ。


 部屋は床は畳、そして木製。


 少女2人が部屋に入ってくる。


 1人は黒髪ロングの良くも悪くも日本らしい少女。


 もう1人は赤毛の少女、ヴェトナム戦争時代のアメリカ軍人のような軍服を着ている。


「ねえ京子、今日の部活は何するの?」


 赤毛の少女が黒髪に聞く。


「カレーよ、ボンカリー」


 京子と呼ばれた少女が答える。


「ボンカリー何てどこにでも売ってるわよ? それは私達が懐古するにあたいするわけ?」


「これを見てもそう言うわけ?」


 京子は部屋の戸棚をあけレトルトカレーを出す。


 そのレトルトカレーの箱は日に焼けていた。


 赤毛の少女はそれに歴史を感じた。


「これはまさか、ボンカリーの初代パッケ!」


「いかにも! ヨフオクで昨日落としたものよ!」


「復刻版でも複製品でもなく? モノホン?」


「聞かずとも歴史を感じるでしょ? 自分の感性を疑うのはこの世で一番アホな事よ?」


「確かに、本物の歴史を感じるわ」


「さあ、懐かしみましょう」


「でもどうすんの? これ? 食べられないと思うわよ? 何十年と年月が経っているだろうし」


「食の歴史を味わうのに舌がいるというのは素人の考えよ」


 そう言い京子はボンカリーのパッケージ裏を赤毛の少女に見せる。


「これは……原材料?」


「そう、原材料。何とこの原材料、今のと違う箇所が12箇所もあるのよ!」


「ほう、それが?」


「懐古に値する箇所はここよ」


 原材料を指差す京子。


「これは、黄色着色料」


 赤毛の少女はそうかと納得に似た表情を京子に見せる。


「そう、今では多くの病気の原因になると禁止されているまぼろしの黄色の着色料それがこれでは使われているのよ! それを知ってからこの表パッケージを見て!」


 京子はボンカリーをひっくり返す。


「これは、今よりカレーの色が黄色い。成る程。これは今より昔の方が食欲をそそる色をしてるわ!」


「でしょ! 良いでしょ!」


「うん、良い! 懐古できたわ!」


 少女は笑った。


 彼女らは今より昔の方が良いと言う思想を持つ者のみ入る事が許される部活動、レトロスペクティ部のメンバーである。

 

彼女らは現代に生き過去を楽しむ懐古主義者たちである。



 おわり

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