第13話
俺は喫茶店を出てアリサ会長を追いかけた。少し走るとアリサ会長の姿がみえる。
「アリサ会長!!待って下さい!!」
声をかけるとアリサ会長はこちらに振り向いた。喫茶店を出るときは目に涙を浮かべていたが、今はショックは受けているようだが、どうやら普段の調子を取り戻したようだ。
「アリサ会長......その、すみませんでした。あいつら、普段はあんなこと言わないんですけど、相当腹が立ってたみたいで......」
するとアリサ会長は優しく微笑んだ。
「春翔くん。あなたが気にすることではありませんわ、ただーー」
アリサ会長は一呼吸置くと微笑みを真剣な顔に変える。
「春翔くんも気付いたでしょうが、あの反応は少しおかしい。いくら殺人犯に疑われたとはいえ、普通あそこまで過剰反応するでしょうか?私はやはり、あの4人が怪しいと思いますわ」
俺はアリサ会長の言葉を聞いて歯を噛みしめる。確かに、あの反応は異常だった。みんな、あまりにも攻撃的だったのだ。
「たしかに、みんなの反応はちょっと過激すぎました。でも、だからと言って俺にはみんなのうちの誰かが梅野さんを殺したとは思えない。今日はあんなだったけど、みんな本当に優しい奴らなんです......」
俺がそういうとアリサ会長は辛そうな顔をしている。
「春翔くんの気持ちも分かりますわ。私も親しい人は疑いたくなどないです。ですが、私はもし、梅野殺した犯人がいるなら許せない。春翔くんも、分かってくれますわね?」
「それは、はい。そうですね......」
俺の場合、自分勝手な話だが、許せる許せないというよりみんなはそんなことをしていない、早くそう安心したかった。
最近、と言っても時間的には1日だが、俺の周りはおかしい。早くいつもの楽しい日常に戻りたい、その気持ちの方が強いのだ。俺にナイフを刺したのが誰なのか、それも気になるが....
「では、とりあえず梅野が亡くなった時刻のアリバイを考えていきましょう」
アリサ会長は話を進める。
「アリサ会長は梅野さんが亡くなった時間を知ってるんですか?」
アリサ会長は首をゆっくり縦に振った。
「ええ、おそらく、というものですが。警察の方々には口止めされているのですが、この際良いでしょう、私達生徒会役員が警察から一応と取り調べを受けたのは知っていますね?そのとき、昨日の19時から21時の間、何をしていたか。それを聞かれました。おそらく、それが梅野の死亡推定時刻でしょう」
なるほど、アリサ会長の言う事は理にかなっている。昨日の18時から20時といえば......
「そうですね、昨日はほのかの提案で、学校が終わってから18時まではみんなでケーキを食べに行ってたんですが、その後は解散してしまったので、その後のみんなの動向は分からないですね。
普段であれば、ほのかが夕飯とか作りに来てくれるんですけど昨日はケーキでもたれちゃってそれどころじゃなかったから、珍しくほのかも家に来なかったんですよ」
するとアリサ会長はピクリと反応する。
「春翔くん。あなた、随分といい身分ですのね。なに、芒野ほのかは毎日あなたの家に夕飯を作りに来ているんですの?」
あ、あれ、なにやらアリサ会長が怒っている。なんだ、なんでなんだ?
「いや、夕飯というか、朝も昼も作ってくれてるというか......」
「あなたって人は......まあ、いいですわ。つまり、その日のその時間、彼女達が家に居なければアリバイはないということですわね」
「あ、でも、ほのかと刹那先輩については、そもそも家にいるっていう事も確認できないので.......」
すると、アリサ会長は不思議そうな顔をしている。
「それは......ご両親が亡くなっているとか......そういう事?」
俺はズキリと胸が痛んだ。最近は気にする事も無くなったが、どうしても、この気を使ったような目が俺は嫌いだった。
アリサ会長は俺の家庭環境は知らないし、わざとじゃないんだろうから。そう思い、あくまで気にしてない程で俺は会話を再開する。
「いえ、ほのかの家はシングルマザーで、おばさんも帰ってくるのがいつもの12時とかですし、刹那先輩は......まあ、家庭の事情で、一人暮らしなので」
それを聞くと、アリサ会長はそこは立ち入るべきではないと判断したのだろう。話題を変えてくれた。聡い人だな。
「では、2人は今のところアリバイなし。残る2人は要確認といったところですわね......確認ですが、親御さんへの確認は春翔くんにお任せしてもよろしいですか?」
「ええ、大丈夫ですよ、杏里と風莉さんの親御さんとは面識もあるので、うまく聞いておきます」
俺はそう答えると、つい溜息をついてしまう。やはり、さっき怒鳴ってしまったとはいえ、みんなを疑ってかかるような真似をするのは気分があまりよくない。
するとアリサ会長はそれに気づいたのか声をかけてくれる。
「さっきはついカッとなって、4人の内の誰かが犯人だ、などと言ってしまいましたが......私も、そうではなかった。早くそう思いたいんですのよ。これから調べていけば、他に犯人がいるかも知れないとわかるかも知れません」
「そうですね、俺も早く安心したいです。一緒に頑張りましょう、アリサ会長」
その後少し談笑した俺はアリサ会長と別れ、1人自宅への帰路についたのだった。
黄昏の半鐘 〜ハーレムメンバーは皆ヤンデレだった!?〜 雨城 光 @amasiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。黄昏の半鐘 〜ハーレムメンバーは皆ヤンデレだった!?〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます