黄昏の半鐘 〜ハーレムメンバーは皆ヤンデレだった!?〜

雨城 光

第1章 予兆

第1話


 今日は、清々しい朝だった。春の日差しが暖かく、外では小鳥たちがさえずっている。

そう、そんな春の....



「はるくん。はーるくん!朝ですよ!!朝!学校遅刻しちゃいますよ!?不良になっちゃいますよー!」


 部屋のドアの向こうから、何やらやかましい声が聞こえる。


「だぁーっ!もう、起きてるって!ご近所迷惑になるからやめなさい!!」


「ご近所って言っても、お隣さん、うちの家ですし、大丈夫だよ。もうお母さんも仕事で出てっちゃったから!それより、ご飯もう出来てるんだから早く起きてー!冷めちゃうよー」



 こいつは幼馴染の芒野すすきのほのか。うちの隣に住んでいて、朝が弱い俺を毎日起こしに来てくれている。

 ありがたい、ありがたいのだが......



「もうー!起きてー!おーきーてーくーだーさーい!!」


「だからうっさい!」


「あだっ......っ!?」


 俺はドアを開けてほのかの額にデコピンをかます。

 普通、幼馴染が朝部屋に起こしに来てくれるなどと言えば、少しはそういう雰囲気になりそうなものなのだが......ほのかはこの調子だ。




「着替えるから、下で待っててくれ」


「はーい。待ってますからね!!」


 俺はさっさと着替えて、寝室から下に降りることにする。



「えへへ......はるくん、今日も寝顔可愛かったなぁー......」


 全く、またよくわからんことを.....



「ん? 部屋の外にいたのに、何言ってんだ、あいつ」




ーーーーーーーーーー



「はい、お味噌汁です」


「あぁ、ありがとう」



 やっぱり、朝飯は和食だよなぁ〜。白いご飯にお味噌汁。うん、うまい。



 俺、神宮寺春翔にはもう、両親はいない。


 我が神宮寺家は元々、この神凪町ではかなりの名の知れた名家だった。


 だが、俺が物心つく頃には祖父母がすでに亡くなっていて、数年前に両親が交通事故で他界した事もあり、残してくれた遺産と、賃貸用にと所有していたこの家以外に、もうその面影を残すところはない。


 幸い、両親の残してくれた遺産と、この家があるのでむこう3〜40年分の生活費には困らない、というのが俺の今の状況だ。



 そんな俺にほのかは毎日ご飯を作りに来てくれている。

 ほのかの家は、母子家庭で、母親は早くに家を出て、夜遅くに帰ってくる。


 ほのかのお母さんは非常に男らしい人で、俺もほのかも1人なら一緒に飯を食べればいい!そんなことを言い出したのもほのかのお母さんだ。



「いや〜。ほのかの作る味噌汁、うまいな〜。いいお嫁さんになるぞ、うん」



「お、およめしゃんですかっ!? な、な、そそそそれって、つまりはるくんのお、およめさんに...」



 そんな話をしていると、




ピンポーン





ピンポピンポピンポピンポーン



「あーっ、もういいところに〜!」


 ほのかがバタバタと玄関にかけていく。


「もう!せっちゃんなんなんですかー!いいところにー!!」


「ん。なにやら、ラブコメちっくな雰囲気を感じたのでちょっと邪魔してみた。それより、急がないとそろそろまずい...」



 彼女は同じく幼馴染の朝比奈刹那。

 学園始まって以来の天才と呼ばれているだが、かなりの人見知りである。

 年上だが見た目は完璧に小学生。昔から子供っぽい見た目がコンプレックスで極度の人見知りなのだ。初対面の人には親の仇を見るような目で睨むのだから、そこが残念ポイント。



「って、ホントだ!刹那先輩が来てくれなきゃほんとに遅れてたかも!ほのか!急ぐぞ!!」


「わわわっ、ほんとです〜!」


 俺たちは時計を見て慌てて準備を再開する。



「お待たせしました!刹那先輩」


 玄関を開けると刹那先輩が家の門に背を預けて立っていた。


「むう。だから、昔みたいにせっちゃんでいいのに。はるとはまったく。」


「だから、流石にそれは恥ずかしいって、もうそんな歳でもないし...」


 そんな、毎朝のやりとりを刹那先輩と話していると後ろからほのかが慌ててやってくる。



「それよりせっちゃんせっちゃん!!昨日のあれ、みましたー?!」



「ほのか。おはよ。うんと、あれって、もしかして最近うちの街にもやっとできたケーキ食べ放題の...」



「そうそうっ、放課後さーー」



 そんなたわいない会話をしながら俺たちは学校に向かった。



ーーーーーーーーーー



 三人で登校していると近所のペットショップが見えて来た。


「あ!はるにいにほのちゃん、せっちゃんもおはよー!もう、遅いよー!」



「おう!おはよう!!悪いな、今日はいつもより遅れちゃって......」


 彼女は三人目の幼馴染、来栖杏梨。俺の一個下の後輩でこの町唯一のペットショップの一人娘だ。彼女は凄まじい動物好きで、どんな動物とでも仲良くなれる。

 もしや、本当に会話できているんじゃないかと言うくらいだろうか。



「それじゃあ、コマ、またねー!......っと、それじゃ学校へれっつごー!!」

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