第50夜 子守唄

2017/2/7

やっぱり出来なかった。しようとすらしなかった。その先の事を考えると動悸がして、呼吸が荒くなる。右手人差し指の皮膚の感触を歯で感じながら、電気の消えた天井を見つめていた。もう壊れていた。相変わらず涙は出ない。

誰に助けを求めれば良いのか。それすらも思い付かず、僕は今、多分瀬戸際で生きている。強く指を噛みしめる事で、生を感じるしかない。


僕以外のヒトは、日々何を思って生きているのだろう。色欲に侵された僕の心は、誰も見えなくなった今、孤独に気づいてしまった。


誰が僕を知っている。



外を走る車のタイヤとアスファルトが擦れる音が、眠りへと誘う。目覚めたくない。

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