第49夜 君を愛す

2017/2/5 k

日中、雨が降ったお陰で暖かい夜となった。2人の吐く息は白い。


今の僕たちは、お世辞でも生活が成せているとは言えなかった。日曜だと言うのに、昼に起きだしチョコを1つ齧って小説を読み耽った。


僕たちに結婚は早過ぎた。特に僕が若かったのだと、最近思うようになった。精神状態を元に戻す事が困難になってしまった。僕は、もう一度妻を、誰かを愛する事が出来るだろうか。日々を消化する事がやっとだ。


友人間では子供が出来た話題で盛り上がっている。子供は?と聞かれた妻の応対に、申し訳無さを感じた。僕の心は、愛はどこへ行ってしまったのか。今だけが異常なのだと信じている。いつか以前のように戻るのだと。不安で仕方ない。



つらい。苦しい。心が壊れている。涙が出ない。もう、誰かを愛する事なんて出来ない。

愛されるなんて怖い。僕はそれに応えられない。誰も僕を知らない所へ行きたい。





彼女の首元からキツい香水が香る。正直香水は得意ではない。しかしそんな非日常を大きく肺に吸い込むことで逃避を加速させた。

鎖骨に強く噛み付く、整った顔を歪ませる。僕の人生は、乱れて止まない。

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