せっかくだしヒロイン目指す
二屋湖 俊郎
プロローグ
薄暗い部屋にその青年はいた。整った顔立ちとは対照的にくすんだ金髪を短く雑に刈ったような髪型がアンバランスさを生じさせている。身体はそれなりに鍛えているのか体格の割に細い印象は与えない。
窓の一つも存在しない10m四方の部屋は広さの割りにシンプルな作りをしており、四隅に灯り用の蜀台と地上へ繋がる階段とを隔てた扉くらいしか物が置かれていない。
床には溶かした金属だろうか、微かな灯りを反射してキラキラと光る液体で直径2mほどの魔法陣が描かれている。
「いよいよこの時がやってきたな・・・!」
青年は興奮したように呟くと、隠し切れない喜びが押し出てきたような笑顔を隣にいた老人へと向けた。
その老人は細い手足に皺くちゃの顔。たっぷりの白い髭に長いローブを羽織り、まさに魔法使いといったいでたちである。老人は目を細めて優しげな笑みを浮かべて青年を見やる。
「長かったのう・・・。10年、じゃったか?」
「・・・ああ。テイマーになるための修行と平行して召喚費用の貯金。長く、辛い日々だった。けどそれも今日までだ!」
老人の言葉に嫌なものでも思い出したかのような表情を浮かべるが、青年はすぐに元気を取り戻して声を上げる。まるでこれから幸福が訪れるのを確信するように。
「さあ、オレの旅の相棒兼ハーレム要員を召喚するぞ!」
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