◇あとがき(WEB版)◇
カクヨム読者の皆様こんにちは。
夏希のたね改め、笹木さくまです。
まずは本作『クリムゾン・オーガ』を読了いただきありがとうございます。
改めて説明致しますが、本作は2010年に幻狼ファンタジアノベルス様より出版させて頂いた作品で、その出版権を解約してWEB公開させて頂いたものです。
何故このような事をしたかというと、本作は私が初めて書いた小説であり、思い入れが深い作品なので、より多くの方に読んで頂きたいと思ったからです。
当時、お金を払って購入して頂いた方々には、損した気分をさせてしまい誠に申し訳ありませんが、そこは津雪先生の美麗なイラストを買ったと思って、どうかご勘弁ください。
ちなみに、私が小説家としてデビューしたのは、これとは別の作品でした。
ただ、小説を書きたいと思い、一本の作品としてきちんと完成させたのは、この『クリムゾン・オーガ』というお話が始めてだったのです。
……まぁ、処女作だけあってもの凄く稚拙で、何かのコンテストに送ったはいいが、一次選考であっさり落ちたのですが。
その後、別作品でデビューしたりしましたが、やはりこの物語を本にしたいと思い、何度も改稿を重ねて応募を繰り返し、幻狼大賞で受賞して出版して頂けたのです。
……まぁ、売れなくて一巻打ち切りになったのですが。
最後まで読んで頂ければ分かる通り、この話には続きがありました。
それも紅い鬼・赤銅柘榴の物語だけでなく、「ポリフォニカ」シリーズのような感じで、同じ世界観だが年代や場所、登場人物達の違う作品群を構想していたのです。
これも供養という事で、ボツになった物語の構想を軽く書かせて頂きます。
○クリムゾン・オーガ
U・Dの不老不死に目をつけた、国家機関との戦いに発展します。
その中で柘榴の両親(鬼であり狩人の父親、病弱な美女の母親)が、狩人協会の手で殺された事も判明します。
本作の「序幕・0-3」の冒頭で柘榴が思い出しかけていた過去の幻影は、協会の陰謀によってパニックを起こした村人達により、幼い彼の目の前で母親が串刺しにされて殺されるという、トラウマに起因しています。
ちなみに、妹の鈴子は実の妹ではなく従兄妹だったりします。
鈴子の父親(党首の藤乃壱夜、故人)の妹が柘榴の母親で、幼い頃に両親を亡くした彼を、藤乃家で引き取ったというのが真相です。
なので、柘榴と鈴子は結婚できますし、鈴子は当然それを狙っています。
あと、故人である藤乃壱夜がガチのシスコンだったとか、ちょっとだけ名前の出ていた姉の真子と妹の鈴子は実は母親が違う(姉は正妻の子、妹はお手伝いである時恵さんの子)など、藤乃家は昼ドラ級のかなりドロドロ家系だったりします。
○イエロー・ライン
クリムゾンでちょっと出てきた受付嬢・南里歩美が高校生の頃、怪物と出会ってしまった時の話です。
食い殺した人物になりかわる怪物によって、周囲の友人が少しずつ消えていき、いったい誰が偽物なのか、ひょっとして怪物はすぐ側に居るのではないかという、何の力もない一般人視点のホラー作品になります。
もう一人の受付嬢こと近江沙耶は、握力とか百m走のタイム、貯金額など、数値として表せるものなら、人を見ただけで分かるという異能の持ち主で、なりかわりの怪物を見抜くのに活躍します。
(ゲームのステータス確認に近いですが、筋力とか敏捷といった、現実的には存在しない数値は確認できません)
ちなみに、沙耶はこの異能のせいで、外見や性格よりも数値の高さで男に惚れてしまうという悪癖があり、柘榴に惹かれていたのもこのためです。
結局、歩美は沙耶の協力もあって怪物を見つけ出すものの、危うく殺されそうになってしまいます。
そこを助けたのが、これまたクリムゾンでちょっと名前の出ていた盲目の念動力者・
この事件がきっかけで、歩美と沙耶は狩人協会に入ります。
ちなみに、歩美はこの件がトラウマになっており、誰も彼も怪物の擬態ではと疑ってしまい、男と恋愛が出来なくなっています。
そして、唯一怪物の正体を暴ける沙耶に対して、表向きは素っ気ない態度を取りつつも、内心はもの凄く依存しており、同じ部屋で暮らすくらいユリユリだったりします。
○ファントム・ブルー
既に「小説家になろう」で公開済みの連作短編『ファントム・ブルー ―Not dye Black―』は、実を言うとクリムゾン・オーガと同一世界の物語でした。
クリムゾンが打ち切りになって本として発表する機会は失ったのですが、やっぱり書きたいなーと思い、本来あったクリムゾンとのリンクは排除して、単品として読めるようにしたのが現在のファントム・ブルーになります。
ちなみに、本来はクリムゾンでちょっと名前が出ていた真祖の吸血鬼『千血朱鳩(ピジョン・ブラッド)』や、断首刀の制作者である魔法人形の鍛冶屋『Grimm・B・B・H』などが、ファントムの方で登場する予定でした。
他にも、ファントムの主人公・イリムが幼い頃に捕らえていた魔術師の施設で、U・Dとニアミスしたりとか、微妙にクリムゾンの方と重なります。
○エメラルド・ギア
エピローグの『6-G』で語られていたような、怪物や魔術というオカルトさえ、発展しすぎた科学によって解明された未来世界において、復讐のために生身を捨てたサイボーグ少年と、心を求めるロボット少女の交流を描くSFボーイ・ミーツ・ガールです。
数百年後の世界なので、当然ながら柘榴達は死んでいますが、U・Dだけは生き残っており、クリムゾンの頃とは性格も実力もまるで違う、化物ような存在としてちょっとだけ話にからんできます。
○Unlimited・Darkness(アンリミテッド・ダークネス)
十八世紀のアメリカ、地震で崩壊した街で生まれた不死身の少女U・Dが、五十億年後の未来、地球が太陽に飲み込まれて消滅するまで生き続ける物語です。
柘榴など親しい人達と死に別れ、それでも生き続けなければならない――桜のような変わらない死者ではなく、変わり続ける生者であるため、大切な記憶も気持ちもすり減って、同一人物とは思えないほど変貌しても、それでも死ねない不死者の悲哀を書く予定でした。
一応、最後は転生オチでハッピーエンドになるのですが、今までの登場人物と死に別れる場面を全て描写するという、かなり鬱な話になるので、書かずに済んでむしろ良かったのかもしれません。
ちなみに、U・Dの正体は『地球が自身を守るために作った端末』です。
なので、地球を破壊しない限りは絶対に死にませんし、クリムゾンから数百年後には地球のエネルギー=超能力や魔力の元を操れるようになって、指先一つで水爆なみの破壊を起こせるようになります。
ただ、U・Dは『星の守護者』であって『自然の守護者』ではありません。
「地球環境を守る? あんたが言っているのは自然――人間以外の木や動物の事でしょ。そんな物は『この星』から見れば体についた汚れも同然。自然とやらを全て合計したって、地球質量の0.1%もないでしょう? だから『この星』から見れば草も木も魚も動物も人間も、全て等しくゴミなのよ」
といった感じで、自然は全く守りませんが、星を壊そうとする奴には容赦しません。
クリムゾンの時点ではまだ、人類は地球を破壊できないので、U・Dは力と使命に目覚めていません(核兵器で表面を焼かれても、星は日焼けした程度にしか気にしません)
それが数百年後、エメラルド・ギアの時代には反物質で地球破壊が可能になるので、これの研究者を皆殺しにする簡単なお仕事を開始します。
といった感じで、U・Dという不死身の少女を軸にした、カラー・シリーズとでも言うべき作品群を構想していました。
クリムゾン・オーガから六年が経ち、他にも書きたい物語がたくさん生まれた事もあって、これらを文章に書き起こす事はないと思います。
ただ、そんな話もあったんだなーと読者の皆様に知って頂けるだけで、物語の供養になるといいますか、区切りをつけて前に進む力にできるので、こうして書かせて頂きました。
ちなみに余談ですが、クリムゾンの原稿を発掘するためにHDを漁っていたら、自分が書いたはずなのに内容を全く覚えていない小説が十本も見つかって、己の記憶力のなさに戦慄しました。
ともあれ、本作および後書きを最後までお読み頂き、改めてお礼を申し上げます。
今後も書籍やWEBで小説を書き続けていきたいと思いますので、のんびりとお待ち頂ければ幸いです。
追記・発掘した十作のなかに『俺の妹は男の娘』というタイトルを見た時は、己の正気を疑いました。
クリムゾン・オーガ 笹木さくま(夏希のたね) @kaki_notane
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