第2話 外に出た

 女房は四年前にのうなって、娘は嫁に行ったし、息子は社会に出て一人で暮らしとる。


 猫の額ぐらいの土地に建てた、ウサギ小屋みたいな一軒家で、狭ぁてしゃあなかった。子どもらが大きなるごとに狭なって、三人で文句言いよるさけ「バカスカ食うからや。痩せさらせ」言うたら総すかん食ろたこともあった。

 毎度、毎度のケンカの種やった。


 そんな家でも何や広いねんな、ひとりやと。


 思てしもてんな、猫、おったらな、て。






 そうかて、ペットショップ行くつもりはあらへん。クソたっかい、アホみたいに二十万以上も出せるか、何やねんティッシュなんたらて。とか、そんなんちゃうねや。

 ニュースでよう言うてるわ、保健所の殺処分の話。

 せやから、ペットショップはちゃうちゃう。アカンアカン。


 ニュース気にしたらいろいろ目にするようなった。保健所の譲渡会やら、保護施設の存在やら、野良猫のネットカフェーいうんか、そんなんやら。


 けどやな。


 譲渡会は審査があるらしいんや。保護施設やらも、預かってる人間に認められへんかったら譲られへんねやと。


 何やねん審査て。落ちたらどうなんねん、わしの自尊心。歳いった男やもめはアカンのかて暗ぁなるやんけ。




 ようわかった、もうええ。

 わしは健康体や。どっこも悪うない。あと二十年は生きることになっとる。


 わし、外に出た。猫探しに。

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