俺はたったの一日でボッチへとなり下がりました

初心者@暇人@

中学二年生 二学期が始まった

 「はぁ~」



 俺の二学期最初の声はため息だった。


眩しく光る昇降口。


まっさきに視界に映ったそれは男女の社交場になっている。



「いや~、二学期こそはモテ期がやってくる気がするんだ。俺は絶対にもてる」



耳を通過する馬鹿げた宣言。


声の持ち主は俺の右隣を歩く佐久間だろう。



「おいおい、お前一学期の時にも、その前にも、それ言ってたよな」



左でタイルを踏み鳴らしながら苦笑いを浮かべる堺。


俺は内心でその反応に共感しながら


「まぁ・・・あきらめろ」


と囁いた。


慌てて「ちょっと山木くん~」などと騒いでいる佐久間は無視することにする。


そして、俺は昇降口の影を潜った。


たくさんの人をかき分け「中学二年出席番号13番」と書かれた下駄箱に靴を投げ込む。


見事に収まった新品の学校指定靴は、昼間なのに蛍光灯により真っ白く照らされている。


しばらくの間ぼーっとその光沢を眺めている俺。


そして、ふと、隣から声が聞こえてきていることに気がついた。


視線を下げて笑顔を向ける女の子・・・苧島に目線を合わせる。



「え~と、おはよう」



どうやらえ~とのくだりが気に食わなかったらしい。


苧島は頬をプクりと膨らませた。


その姿は黒髪ポニーテールの彼女にとてもよくにあっている。



「まぁ、いいですけどね」



いつものように丸めたような敬語を使い、苧島はチェックのブレザーをきちりと正した。


一体今、苧島の中では何がよかったのだろうか。


少し気になったが、声を掛ける前に不自然な笑みつくった苧島。


いつもなら興味なさそうに笑って取り繕うはずなのだが、なにかおかしい。



「お前、なにかあったのか?」



俺がその質問を投げかけたとき、真横から何者かが俺の肩に飛び込んできた。


咄嗟に突き出した拳がそいつの腹を見事に捉える。



「グッふ」



まるでスローモーションのようにゆっくりと、そして柔らかく倒れ込んだのは大須賀 ゆうやだろう。



「なぜだ!なぜ、この俺にダメージを与えることができる!」



「いやいや、一学期は毎朝俺に飛び込んできてたんだから今日も予想できるだろ」



周囲から笑いが飛び跳ねた。そして口々に



「さすが山木!」

「よっ!マスターアジア!」



などと打合せしたように言葉をとばす。


いやいや、マスターアジアってなんだよ。


と、突っ込みたいところだ。しかし、ひとまず無視することにする。



「どうもどうも」



隣で大須賀が一礼した。



「お前じゃねぇよ」「なんでお前だよ」



周囲から飛び交った歓声が再び笑いを巻き起こす。


というか大須賀可哀想すぎだろ。


いや、そういう優しさも世の中には存在しているということなのか~。


うん、やさしさって怖いな。


プルプルと軽く身震いし俺は階段へと向かった。

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