五年後のクリスマス

花岡 柊

カフェ

 そこは、とある場所にある、とあるカフェであるが。今時のとは違い若干の古風さを醸し出していた。しいて言うなら、カフェというよりも喫茶店と言った方が解り易いかもしれない。

 実はほんのちょっとの不思議を抱えているこのカフェは、木目の造りを基調とした落着いた店構えをしている。表に面した窓は出窓になっており、軽く開けられた窓からは静かに揺れるカーテンが窺える。

 柔らかなリネン素材のカーテンはふわりふわりと風を受け、店内の様子を時折ちらりと見せてくれていた。

 店の前には、どういうわけか四季折々の花々がプランターや植え込み花を咲かせていた。

 春に咲くチューリップやハルジオン。夏に咲く桔梗やひまわり。秋に咲くリンドウとコスモス。そして、冬に咲く水仙と椿。

 どうして四季の花々が同時に咲いているのかを、誰も訊ねたりはしない。このカフェだからなせることなのだと、訪れた人はなんの疑いもなく一様に思うからだ。


 今日は、どこも光り輝く特別な日。外にある花たちにはお休みをあげ、代わりに繰り返し瞬く灯りがこのカフェを包み込んでいる。

 少し重そうに見えるドアには、イチゴの蔓に似た葉をモチーフにしたドアノブが付いていた。その取っ手を握り締めて店内に踏み込めば、心地よく酔いしれてしまいそうな馨しいコーヒーの香りに包まれるだろう。

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