カクヨム料理人 ~食す~
僕が住んでいるこの星では、★の数によって人気度が計られる。
★が多い者が、表舞台に立つことを許され、注目される。
★
この星では、一流シェフを目指している人や、デビューすることを夢見ている見習いシェフ、ただ料理を作るのが好きな人、家庭料理の腕が上達したい人、自分の料理の腕前を多くの人に披露したい人、そして、そんな人の料理を食したい人が集まって、常に品評会が催されている。
料理を採点したり品評するには登録が必要だ。
カク族(シェフ)か、ヨム族(グルマン)に分かれてはいるだが、両方を兼ねてもいい。
カク族は、様々な小説という名の得意の創作料理を提供する。
ヨム族は、振る舞われたそれらのごちそうを食する。
ああ、言い忘れてたけど一見さんなら登録しなくても食することは可能だ。
もちろん食するのは無料だ。
登録すると、カク族、ヨム族、共に、一つの料理に対して★を一個から三個まで投げられる資格が与えられる。
その三段階の基準値は各々の裁量の範疇でいいのだ。
堅苦しいことは抜きにして、食した料理が気に入ったら★を投げればいいし、気に入らなければスルーしてもいいのだ。
満足したら品評(レビュー)し、称賛することもできる。
ただし、自分の料理には★は投げられない。
★★
僕は名も無いシェフ見習い――正確には見習いシェフだ。
曲がりなりにも僕はカク族の一員ではあるが、時々ヨム族側にたってつまみ食いをする。
他のシェフが調理した料理を味見をするわけだ。
自分は美食家だと信じて疑わないのだが、かといって、そう簡単に一流シェフと同じようなものは作れない。如何せん僕は、調理の才能に乏しいのだから……。
だから、他のシェフが調理したものを食する時は、自分のスキルアップのためにと、しっかりと分析しながら味わう。自分が作る料理の参考にする、刺激を得るという目的もあるからだ。
美食家だからこそ、★にもこだわっている。
ヨムにしろカクにしろだ。
勲章を授与、拝受するというような感覚だ。
しかし、満足できる料理にはなかなか巡り合えないのも事実だ。
自分自身に検索スキルが無いのかも知れない。
求めるものが、見えないところに埋もれているのかも知れない。
料理が多すぎて、まだ巡り合っていないだけなのかも知れない。
ただ、共感できる料理や、僕の作る料理より美味しいものはたくさん見つかる。
そういうときは、もちろん★を投げる。
カク族の立場で言うと、★がひとつだろうが貰うと小躍りするほど嬉しいものだ。
★の数が、多少自分のモチベーションとシンクロしているのは間違いない。
少しでも多くの人に満足を与えられるようなものを完成させていくことしか道はないのだ。
少しでも認められるように、コツコツと――いや、料理だけにコトコトと。
★★★
僕の作る料理は、まだまだ未熟だ。
まだまだ見習い程度の腕だ。
大勢の方を満足させるには程遠い。
このままでは、人気者になるのも程遠い。
修行が足りないのは明白だ。
――どうしたら人気者になれるのか?
それがわかれば苦労しない。
近道なんか探しているようではまだまだだ。
最低限、食材の選び方から調理の仕方、調味料の量から味付けも、器の選び方から盛り付けまでの一連の工程を通過しなければならない。
まずは、まかない料理で認められなければ話にもならない。
何度も何度でも、試作を繰り返し、
何度も何度でも、失敗を繰り返し、
きっといつかは、
僕が精魂込めて作った料理を、
いつかはきっと、言わせてみせる――
「★みっつです!」
<了>
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