迷宮の果てで会いましょう

@Napp

第1話

「...」


僕は思考していた。自分のおかれた状況をどう打破するか頭をフル回転させていた。


今の僕はおそらく絶体絶命の危機的状況にいるのだろう。

周りを見れば20メートル離れたところで小汚い格好をした男が6人、やたら薄着な短髪と長髪の少女が2人、手に短剣らしきものをもってこちらを睨んでいる。薄着の少女の1人がなにか僕に向かって叫んでいるが、耳がよく聞こえない。まるで水の中にいるようだ。


間違いない、命の危機だ。今すぐ立ち上がって、全力をもって逃走を試みた方がいいのだろう。

しかしなぜか僕に恐怖や絶望といった感情は無かった。あるのは十五年生きてきて感じたことのないほどの倦怠感。重りをつけたかのようだ。手足もうまく動かない。


そもそも動けたとしてもおそらく逃げられない。周りの男達はどう見ても成人している。さらに複数。痩せているわけでもなし、50m走9秒の僕に逃走は無理だ。スタミナもない。


よしんば逃げおおせたとしてもここは森だ。都会っ子で方向音痴の僕にはさんざん迷った挙句餓死する未来しかみえない。


やる気の抜けた手足をうごかして正座の形をとる。そうして手を地面につき、頭を目一杯下げる。


逃げられない。命の危機。何故こうなったのかも分からない。そして相手の目的も不明。

ならこの場で一番正しい行動は、



「すみませんでしたァァッ!」


そう叫ぶのが早かったか、肩に衝撃が走った。


上体を起こして見れば短剣らしきものが深々と肩に突き刺さっている。


思わず蹲ろうとする僕の目の前で短髪の少女が脚を振り上げていた。かかと落としの形だ。いつの間にと思う暇もなく、凄まじい速度で落ちる踵が僕の顔へと炸裂する。


意識は闇の底へと沈んでいった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る