おしゃべり通販

白乃 ゆき

第1話 日課


私は電車で必ず通販サイトを見るのが日課だ。


この日、私はいつもより早い時間の電車に乗った。

毎朝私は3両目の入って左側の席に座ると決めている。なぜなら私が降りる駅では3両目が1番出口に近いからだ。しかし、今日は30分早い電車に乗ったからなのかその席はスーツを着た男性が先に座っていたので仕方なく、男性の隣を少し空けて座ることにした。

電車の扉が閉まる音が聞こえ少しずつスピードを出して走っていく。私の日課は、通販サイトを見ること。大好きな女性アイドルの曲を聴きながら洋服や、今人気の化粧品を自分が降りる駅に着くまでの1時間ひたすら見るのがとても楽しみなのだ。


(ここのお店のコート可愛いなぁ。スカートも可愛い…。今度お給料入ったら買っちゃおうかな〜♪)


そんなことを考えながらあと2駅で自分が降りる駅に着くと思った瞬間、隣に座っていたスーツを着た男性に肩を叩かれた。私はびっくりして無意識にイヤホンを外し、男性を見た瞬間話しかけられたのだ。


『すみません。通販好きなんですか?』


びっくりた・・・。

私はいきなり話しかけられたのでうまく返事ができなかった。


『は…はい…。』


正直、びっくりしたより怖さのがあった。

その男性は、ラグビーの選手並みに大きく、しかも距離が近すぎる・・・。

戸惑っている私を見た男性は笑顔で次の言葉を言った。


『よかったらこれ!最新の通販なんですけどよかったら!!』


1枚のチラシを渡された。


“あなたの欲しいもの何でも手に入ります。”


(怪しい……。)


いやいやいや。知らない人から急に声をかけられて挙句の果てに通販のチラシを渡されるときどのような顔をするのだろうか。

普通、受け取らなかったり苦笑いだったり無視をするのが普通というのか。

しかし、私は衝動的に受け取ってしまった・・・。


“何でも手に入る”なんてそんなうまい話があるわけない!¨



『あの!!』


チラシを返そうと思い横を見た時にはその男性はいなくなっていた。

怖すぎる・・・。

朝からこんな怖い思いをするなんて今だに心臓の音が大きいのが自分でもわかる。






でも、なぜだろう。


私はそのチラシをなぜか捨てようとは思えなかった。

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