endless puzzle

オノマトペとぺ

第1話

 僕は記憶のパズルゲームをするために、世界を周っている。僕が昔訪れたことのあるところに、もう一度足を運ぶのだ。その場所で今僕の持っている断片的な記憶を現実で見つけにいく。


 記憶とはとても不思議なものだ。何か強烈な印象を受けて記憶に残っている物ももちろんたくさんあるが、その一方で、本当にただの田んぼの畦道あぜみちや、どこかの家庭のごく普通の垣根といったなぜ記憶しているのかもわからないようなものもある。それはなぜ自分はそんなことを覚えているのか皆目見当もつかないのに、それでいて確かにイメージできるもの。


 そういった記憶ほど、なぜか加工された写真のような色鮮やかさと、初夏の陽だまりのような暖かさをもっているのだ。さほど大切な記憶とは到底思えない。それでも僕の頭が何年もの間残してきた記憶を、もう一度見に行きたいと思うのはさほど不思議なことではないと思った。それがどんなに平々凡々な光景の記憶であっても。


 僕は窓の外を覗いてみた。見えるのは、窒息しそうなほど分厚い雲と、その雲の上に乗っているかのような空と、どこかに沈んでいく太陽だけだ。


 こんな景色も僕の頭はきっと勝手にしまいこんで、いつかまた僕に同じ景色を探させるのだろう。記憶のパズルピースを探しながら、また新たなピースが生まれていく。次々に増えるピースにきっと終わりはこない。それでも僕は不快だとは一切感じない。願わくは、僕が死ぬその最後の瞬間までに、誰よりもたくさんのピースを集め、誰よりも大きなパズルを作っていければいい。


 僕のこのパズルは決して完成しない。きっと僕は最後の一息に見る光景さえ新たなピースにしてしまう。完成しないパズルは、それでもそれだけ僕の人生が、多彩で、豊かで、面白かったのだと何も記憶できなくなった瞬間に胸を張らせてくれるだろう。

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