人に魚

 俺は、跳ねた。飛んだ時の衝撃が、さっきまでいた向こう側の世界を丸い何かが埋めていく。身体から離れていく空気が小さい何かをひとつひとつ象って広がっていく。その何かは遠く長く。どこまでも続いていきそうだった。

 俺は、そのまま落ちていった。落ちていく一瞬で見た景色は水の中から覗いていた時よりも美しかった。

 水の中に戻っていた俺を、水の下ではみんな驚いてくれた。俺はすごい奴だ! と誰もかれもが賞賛してくれた。

 だが俺は、自分の住む世界が、唐突に、ひどく寂しいものではないかと感じた。

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