しゃべる猫は僕に説教する。

朝花倉

戦国猫時代 序章

 シャーーー!!シャーーー!!

毛を逆立て、僕に睨みを効かせる。


僕は何をしたわけでもない。


ただ廊下で横をすれ違っただけ。

何が気にさわったのか毎日わからない。


この威嚇してくる茶色いブチ柄の太っちょ雄猫が、

僕らのうちの家猫、「イエヤス」だ。


こいつは毎朝の日課のように威嚇してくる。


しかしそんな毎朝懲りずに威嚇されてるのが僕、

れき 忠次ただつぐ

高校一年の16才の普通のthe平均男だ。




「ツグにい、おはよう!またイエヤスとケンカしてる!!」

「本当だ、またケンカしてる!!毎朝飽きないね、ツグにいは。」


忠次「ケンカじゃない、勝手に威嚇されてるだけ!!」


そう冷やかして来たのが、双子の中学二年生の弟

れき 康政やすまさ」と「れき 直政なおまさ」。一卵性双生児で顔も声もそっくりだ。

顔は悔しいが僕なんかよりカッコいい。


康政「ツグにい、イエヤスと遊ぶのもいいけど朝飯当番ツグにいだからね?」


忠次「わかってるよ!イエヤスがどいてくれないんだ!」


シャーー!シャーー!


喋っても怒るらしい。


直政「早くねーお腹空いたー!」


「ヤス!ナオ!、お前らも早く学校いく準備しろよ!」


直政・康政「「カツにい、おはよう!」」


忠次「おはよう、兄貴」


「おはよう!忠次早く飯作れよ!俺も腹へった。」とドシドシと廊下を歩いてくるのが、

僕らの兄貴「れき 忠勝ただかつ」だ。高校三年生の野球部のキャプテンだ。


忠次「でも、イエヤスが…」と下を見るともういなかった。どこかに逃げていった。


兄貴の足音にビビって逃げたんだろう、朝の兄貴は機嫌が悪そうに見える、だからイエヤスは朝の兄貴には弱い。



とりあえず朝飯を急いで作る。


イエヤスは四兄弟の中でも僕以外の三人には、なつくのだが。

どうしても僕にはなついてくれやしない。


忠次「出来たよ!!」

ぞろぞろと三人共集まり四人で飯を食べた。


母さんと親父は仕事だ、母さんは外資系の仕事でロンドンに1ヶ月程いっているし、親父は漁師なので遠洋漁業で半年に一回くらいしか帰らない。


だから今家には四人だけ。

いや正確には四人と一匹だけだ。


康正・直政「「いってきまーす!」」


忠勝「いってくる。」

渋いよ兄貴と思いながら靴を履く、飯当番が家のカギを閉める。我がれき家のルールだ。


忠次「いってきます。」

一匹を残した家に声を張り家を出る、三人は自転車で僕を置いてさっさと学校に向かった。


薄情な兄弟だと、少し思いながら僕も自転車にまたがり学校に向かう。


家を出て200mくらいのところで

「…あっ、体育服忘れた。」

まだ間に合う、忘れものに気付き自転車をUターンさせて家に戻る。



家に着き、ドアのカギを開ける。

…ガチャ


…リビングから物音が聞こえる、

あれ?テレビ付けっぱなしだっけ?


「…泥棒?」

怖くなったので、音をたてないようにして玄関からリビングまでそっと歩く、


ゆっくりとドアを少し開け、中を覗いてみる。


「にゃはははは、この司会者絶対カツラだニャ、視聴率気にする前に自分の髪の本数気にするべきだニャ!」



…誰かいる。誰かがソファーに座ってテレビ見て、笑ってる?


ガチャン

気になりすぎて体が前のめりになり

ドアを全て開けてしまった。


するとそのテレビを見てた人物がビクッとした


気づかれた!

逃げなきゃ!


足がすくんで動けない。


その人物がゆっくりとこちらを向いた。


「…ん?」

…泥棒ではなかった。

…人ですらなかった。

すべて外れた。

正確には猫、しかもうち

「…え?…イエヤス?」




イエヤス「…み~た~ニャ~?くそが~き~!!」


























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