第3話 「準備フェイズ」

  俺はラルエシミラに尋ねる。


 「ねぇねぇ、ラルエシミラさん」


 「はい! なんでしょうか」


 彼女は、首を少しかしげながら言う。


 「『特殊能力授与』ってのは、なんなんですかねぇ?」


 「はい、説明しましょう! 『特殊能力授与』とは、あなたの素質に見合った能力を、こちらの独断と偏見によりチョイスさせていただきまして」


 「はいはい」


 「そして、これからその特殊能力を授与する儀式をとり行おう、というわけです!」


 「ほいほい」


 「こちらが、その特殊能力を内包した『朱印玉しゅいんぎょく』でございます。ささ、とっとと飲んでどうぞ」


 「へいへい......ん? 今、何か飲むって言ったよね......」


 そう言い終わる直前、戸賀勇希の口へと『クッソ赤い玉』が放り込まれる。


 ——ゴックン。


 「ちょ! 何してくれてんすか! 飲み込んじゃったじゃないですか!」


 俺は涙目になってラルエシミラに訴えた。

 しかしラルエシミラは構うことなく続ける。


 「しばらくすると体に変化が現れてきますから。ほら、なんだか感じませんか?」


 「ん? うーん、言われてみればなんだか胸の真ん中がポカポカしてきたような......」


 胸の真ん中に手を当ててみる。感覚は、『暖かい』から、『熱い』へと変わっていく。 

 さらに、猛烈な吐き気にも似た感覚が襲ってきた。

 あまりの苦しさに、口を押さえながら地面に這いつくばる。


 「うぉぉぉぉぉぉ!!! ......ら、ラルエシミラァァァ! ......なんだこれはぁぁぁぁ!!!」


 怒りに満ちた鬼気迫る顔で、ほくそ笑む彼女を睨みつける。


 「クスッ。それじゃぁまるで『魔傑フリート』みたいですよ? そろそろ、あなたの武器が現れます。頑張れ頑張れ!」


 叫び声とともに、俺の口から何かが飛び出してきた。

 カラカラと、金属が落ちる音が鳴る。


 「おめでとうございます! それがあなたの『魂の神器アルマ・アニマ』です」


 「はぁ......はぁ......ん? 何すか......これ......」


 俺の目の前には、柄の赤い「ハンドスコップ」が転がっていた。

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