scene 26~30

【scene 26】

運転が荒いって叱られた。

でもレースの時のタイヤが滑る音が好き。

ずっと我慢してきた。

今夜、山道で私はタイヤを鳴らす。

助手席のあなたはきっと驚く。

従順なドライバーの小さな反乱って。

そうじゃないから。

私は今夜、籠を出る。

タイヤの音は私の決心の音。

ByeBye !/fin



【scene 27】

「こういうことだから」ってズルい男。

ゲイだって言いたいの?

だから別れると。

そんな演出しなくてもこっちからお断り。

ズルくて鈍い。

あんたの横で

バカ芝居に付き合ってくれてる子の気持ちも

わかってないよね?

ねぇ、そんな眼差しでそいつ見つめないで。

バカな昔の私みたい。/fin



【scene 28】

何回やってもBm7が弾けない。

ちゃんと左手が押さえられてないから、

5弦がマヌケな音になる。

『だからこうやって・・』

後ろから被さるみたいに

ネックの持ち方を教えてくれる。

『なんでそんな形になるんだ?』って。

でも、背中があったかいから

一生弾けなくていいや、Bm7。/fin



【scene 29】

あと5cm背が低かったら

猫背にはならなかった。

あと10cm低かったら

おしゃれなヒールが履けた。

あと15cm低かったら

友達ではなかったのかな。

同じ目線じゃなくて、

君のことをちょっと下から

見上げるみたいに話していたら、

友達以上になれたのかな?

甘えられたのかな。/fin



【scene 30】

『月が美しいのは闇の中にあるからだ。

誰かが魅力的なのは心に闇を持ってるからだ。

あんたの闇はなあに?』

そんな言葉でドキドキできてた。

青くてかわいかったでしょ?

だんだんダメだね、

口説文句にしらけてしまう。

かわいくなくなっていく私のことも

見守っててね、真昼の月。/fin

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