第7話 「能力者の真実」
今日は火曜日。
昨日とは違い、ちゃんと6時に起きる事が出来た。
いつも僕は7時30分に家を出ている、だから6時から7時30分までの1時間30分で朝ご飯を作り、食べなければいけない。
まぁ、慣れてるからすぐ作れるけどね。
朝は適当に目玉焼きを作り、食べた。
それからは家でゆっくりして、時間になったら家を出た。
うん、いつも通りだ。
家の前で美少女が待っている事以外は。
「おはよう」
「お、おはようございます!」
昨日の夜、家が隣という衝撃の事実を知り驚いたが、あれから窓越しにいろいろ話をする事が出来た。
なぜ朝一緒に登校する事になったかと言うと、昨日こんな会話があったのだ。
『そう言えば、あなたっていつも何時くらいに家を出てたの?』
『えっと…7時30分には出てましたね』
『そうなんだ、私はいつも7時には出てたわ』
『へぇ…だから一度も朝会わなかったんですね』
『そうね。 ……折角だし、明日から一緒に登校しましょうか、1人だと退屈だし』
『えぇっ⁉︎』
これには本当にびっくりした。 確かに1人だと退屈なのは分かるが……
話した感じ、悪い人ではなさそうだし。
……というかこの人根はめちゃくちゃ優しい人だった。
隣ではアリスさんが無言で歩いている。
ただ歩いているだけでも絵になると思うほど美しいが、折角一緒に登校してるんだ、なにか話さなければ…
「……あっ、アリスさんっ!」
「…何?」
まずい……名前を呼んだだけで何も考えていなかった。
アリスさんが首を傾げてこっちを見ている。
何かないか何かないか何か……
「あ、アリスさんは何組なんですか?」
お、我ながらいい話題だ!
「あら、言ってなかったっけ、1組よ」
「へぇ、1組なんですか」
「えぇ」
「……」
「……」
はい会話終わり。
会話が続かない。 もう無理に会話しなくても良いだろうか、このまま無言のままでも…
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど」
「……あっはい、なんですか?」
アリスさんが急に真剣な表情で聞いてきた。
「もしあなたが能力を使えるようになったら、その力で何をしたい?」
「……はい?」
「簡単な話よ、能力をいい事に使うか、悪い事に使うか。 その2択よ、正直に答えて。
別にあなたがどっちを選んでも軽蔑したりしないから。」
なぜアリスさんはこんな質問をするんだろう。
いい事とは、能力を使って誰かを助けたりする事だろうか。
悪い事とは、能力を使って誰かを傷つけたりする事だろうか。
なら、僕は
「僕は悪い事には使いません。 いい事に使います」
「そう。 なら聞くけど、あなたにとって”いい事”とは、”悪い事”とは何?」
「いい事は人を助ける事、悪い事は人を傷つける事です」
「………そう」
アリスさんは無表情のまま言った。
本当に何故こんな質問をするんだろうか。
そんな会話をしていると、学校に着いた。
校門を通り、歩いていると
「おーい雷斗〜!」
後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
振り返ると、カイが手を振りながら走ってきていた。
「カイ、おはよう」
「おう! おは……よ…おおおぉぉぉ‼︎⁉︎」
カイが急に大声を出した。
「なんだよカイ、あまり大きな声出さないでくれよ」
「お、おまっ…えっ…おまっ…えぇっ⁉︎」
カイが僕とアリスさんを交互に見て驚いている。
あぁなるほどね、そういう事か。
「あなたの知り合い?」
「あ、はい。 こいつは友人のカイ…いや、海堂 涼太です」
アリスさんはカイに丁寧にお辞儀をした。
お辞儀されたカイは手を前に出してオロオロしている。 なんか見てて面白いな。
「紹介するよカイ。 こちらは生徒会の一員のアリスさん」
「知ってるよ‼︎ 知ってるに決まってんだろ! 逆にこの学校で知らない人はいないくらいだろ!」
カイが急に大声で喋り出す。
うるさいな…アリスさんも耳塞いでるし、周りの人も見てる。 勘弁してくれよ…
「俺が聞きたいのは、どうして雷斗がアリスさんと一緒に登校してんのかだよ!」
まぁ、それが聞きたいのは分かってたけどね。
「それはね、アリスさんと僕の家が…むぐっ⁉︎」
急にアリスさんに口を押さえられた。
息ができないんですけど、苦しいんですけど!
「……私の家の事は絶対に言わないで!」
アリスさんが小声でそう言ってきた。
僕はブンブンと頷くと、手が話された。
「ど、どうした…?」
「いや、えっとね…一緒に登校してるのは……えっと…」
どうしよう、なんて言えば良いんだろうか。
何を言っても怪しまれる可能性があるぞ……
僕が考えていると、アリスさんが言ってくれた。
「えっとね、実は黒神君が生徒会に入ってくれたから、仲良くなる為に一緒に登校してるのよ…!」
嘘なのがバレバレだ、アリスさんは嘘をつくのが下手なのかな?
こんな嘘がカイに通用するわけが…
「えっ⁉︎ 何お前生徒会入ったの⁉︎ どういう風の吹き回しだよ!」
なんだ、そっちに反応してくれたか。 このまま上手く話を逸らそう。
「そ、そうなんだ! 昨日誘われてさ」
「生徒会ってあのイケメン会長と水野さんとアリスさんがいるんだろ?
そこに入るってお前……勇気あるな!」
「うるさいな…」
入るしかなかったんだから仕方ないだろ。
するとアリスさんは校舎についている大きな時計を見ると……
「あっ! もう時間だわ! 黒神君、早く行くわよ!」
「えっ? どこに…」
「向かいながら話すから! 早く!」
「ちょっ…!」
アリスさんに手を引っ張られ、強引に連れていかれた。
1人残されたカイの
「え、雷斗まさかお前…リア充になったのか…?」
と言う呟きは、僕には聞こえなかった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ちょっちょっとアリスさん! 一体どこに行くんですか!」
「生徒会室よ」
アリスさんは僕の手を離し、ゆっくりと歩き出した。
「今からですか? もうホームルーム始まりますよ?」
「あぁ、今日は私達、授業出ないわよ?」
「…へ?」
「生徒会の特権でね、何か大事な用がある時は授業を公認欠席出来るの。
だから今日は放課後までずっと生徒会活動よ、表向きはね」
な、なんだそれは……
「あなたには覚えてもらう事いっぱいあるんだから、頑張ってもらうわよ」
「は、はい」
学習棟を出て、部室棟に入り階段を登って三階に行き、生徒会室の前に着いた。
アリスさんは扉を開け
「ごめんなさい、遅れたわ」
と言いながら入った。
「し、失礼します」
僕も続いて中に入る。
すると突然笑われた。
「はははっ! なんだよ『失礼します』って! もうお前は生徒会の一員なんだから、堂々と入って来ればいいんだよ」
声の主は凍夜さんだった。 隣には香夜さんも居て、ニコニコしている。
昨日と同じメンバーだ。
「さて、んじゃ早速能力の練習するか! ………と言いたいが、まずは教えなきゃいけない事がいっぱいあるんだ」
「雷斗君の席は用意してあるからね」
生徒会室は結構広い。部屋の壁には本棚があり、沢山の本が置いてある。
そして部屋の真ん中には長机が置かれており、皆でこれを使うらしい。
凍夜さんと香夜さんが隣同士で座り、凍夜さんの前にアリスさんが座っている。
そして僕の用意された席は、アリスさんの隣だった。
「あ、ありがとうございます! ……ん? 今、雷斗君って呼びました?」
昨日は香夜さんは僕の事を黒神君と呼んで居たはずだ。
「うん。 だって同じ生徒会なのに苗字って嫌じゃない? あ、もちろん雷斗君が嫌なら変えるよ?」
「い、いえ! 嫌じゃないです!」
「そう。 なら雷斗君も私の事名前で呼んでね?」
「は、はい」
僕達が話をしている間に、凍夜さんは箱をガサゴソと音を立てて何かを探していた。
「あれ、どこだったかな…あ、あった!」
「どうしたんですか?」
「お前にこれをやろう」
そう言って凍夜さんが僕に渡してきたのは
「腕章…ですか?」
「そうだ。 生徒会の活動をする時は必ず付けるように」
「はい!」
”生徒会”と書いている腕章を受け取り、カバンに入れた。
「後は……特にないな。 んじゃ能力の話をするぞ」
これだ、これが1番聞きたい事だ。
凍夜さんは僕をジッと見て
「まず、能力者には3つの種類が居る」
指を3本立てて言った。
「まず1つ目、お前のように誰かに殺されて蘇ったパターン」
そして凍夜さんは自分と香夜さんを指差し…
「2つ目、俺と香夜のように、自然災害で死に、蘇ったパターン」
なるほど、殺されるわけじゃなく、自然のせいで死んだ場合も能力者になる可能性があるのか。
そして最後にアリスさんを指差し…
「そして3つ目、これは本当に珍しい。
両親が能力者で、能力を初めから持ったまま産まれてきたパターンだ」
「……え?」
両親が能力者…? それを受け継いで産まれたのがアリスさんって事か?
「そしてこの場合……」
「それは私から言うわ」
凍夜さんの言葉をアリスさんが遮った。
「両親から能力を受け継いだ場合、母と父、2人の能力を使えるのよ。 つまり……」
まさか…
「私は、能力を2つ使えるの」
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