浅凪凪波の日常

@nakashima_aoi

00 浅凪凪波についてのレポート

 リエゾンエージェントへ浅凪凪波に関する報告書


 Name:浅凪凪波 あさなぎななみ 20歳 女

 Code name:死線の赤(デッドラインレッド)、Let DEAD Red

 Syndrome:バロール、セレクティッドに属するピュアブリード

 Physical ability:弱~並

 Attachment:戦闘用個人セルリーダー

 Ability:魔眼で死線を見ることにより対象の弱点を把握、攻撃

     自身のみでなく他人に示すことも可能

     相手の死角を見ることによって瞬間的な複数の攻撃


 19--年、地方の神主の娘として生まれる

 幼少期より時折神懸かるという噂有り

 齢10の頃より神社の巫女として舞を披露する

 周囲の住民の聴き取りよりこの頃からすでにオーヴァードとして覚醒、能力を使いこなしていた様に思われる

 舞の様子は神事として口外することを禁じていた為、神社無き今になるまで外に知れることはなかった模様

 もしかすると家の者は何か知っていたのではないかと予測できる


 今から3年前、浅凪凪波が17歳の頃、町にて行方不明者が続出し始める

 UGNも捜査に乗り出すが奴らにも被害が出ており、オーヴァードの仕業と確信した私が既にジャーム化しているであろう者に接触する為に訪れ、その調査中に浅凪凪波に襲われる

 様子を見る様に私を攻撃していたが数分後立ち去る

 彼女が神社の娘であると知った私は、その夜社へと向かう

 到着した段階で既に社は柱の一本まで完全に破壊され尽くされており、周囲には原型を留めず死んでいるUGNのエージェントと倒れている浅凪凪波がいるのみであった

 私は浅凪凪波を回収し手下の者に社の調査を任せた

 その後の報告によれば彼女の両親と思われる残骸は社に紛れて散乱しており、結局のところ神隠しの被害者達は消えたままであった

 浅凪凪波は幾度か生死の境を彷徨ったのち目を覚ました

 私は彼女が暴れることを危惧して然るべき施設で経過を見ていたがそれは杞憂に終わる

 浅凪凪波は記憶障害を起こしており事件中や過去の記憶のほとんどを失っていた

 役割を終えた私は“ウインドマスター”へと引き継いだ


 一ヶ月後、浅凪凪波についての連絡が入る

 素行良好で成績優秀であったがつい先日問題を起こしたとのこと

 訓練生同士のいざこざ、それ自体はどこにでも良くある問題とも言えぬものであるが、相手を殺したという

 そういった訓練や他の教官の元なら考えられる、しかし“ウインドマスター”の元でとなればそれは特殊例である

 彼女は厳しいがFHの中ではUGN寄りの訓練を行う、欲望を制御させ、衝動的にならず、ジャーム化を防ぐ

 これといったきっかけはなかったらしい、ただそこに、目の前にいたチルドレン候補を突如殺した

 表情からはそれに対する感情は読み取れなかった、データとして残っているのは前後の侵食率の変化のみである

 数日前から不可解な侵食率の上昇があり、殺した直後はジャーム化の基準を超えたが直ぐに正常な侵食率に戻っていた

 殺しが既に日常になっている、扱いには注意、浅凪凪波に訓練の必要なし

 締めの言葉は私のセルへの移動を意味していた


 現在浅凪凪波は私の下位セルとして戦闘用個人セルで活動中

 行動に当たって彼女に二つの指針を出している

 一日に一人しか殺すな

 一日に一人殺せ

 もちろん指令によってはこれから外れることもあるがおおむね守っており、幸いなことにジャーム化には至っていない

 しばらくはこのまま様子を見ることにする、要観察対象には変わりはない

 ジャーム化した場合は無差別な殺戮を開始すると思われる

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る