【短編】桜の咲く、あの日に。

ぽんちゃ 🍟


桜を見るたび 私は思う。


「ずっと散らなきゃいいのになぁ」


だってその方が 綺麗でしょ?


けれどそれは 叶わぬ願いで


散ってく姿も 綺麗だよって


きみが私に 教えてくれた。




咲いては散り、咲いては散る。


毎年それの 繰り返し。


なんで桜は 毎年咲くの?


私はきみに 問うてみた。


咲きたいからかな、なんて言って


私の問いに 笑うきみ。




咲いては散り、咲いては散る。


ただただそれの 繰り返し。


その行いに 意味はある?


私はきみに 問うてみた。


あるんじゃないかな、なんて言って、


私の問いに 笑うきみ。


そして今年も 桜が咲く。




どうして桜は 綺麗なの?


私はきみに 問うてみた。


だけどこたえは 返ってこなくて


笑い声さえ 聞こえなくて


そうだった、


かつて昔の隣のきみは


私の隣に いないのだ。




桜を見るたび 私は思う。


「ずっと散らなきゃいいのになぁ」


だって桜は


きみと私の 思い出だから。



桜を前に 私は叫ぶ。


遥か遠くの 会えないきみへ。



さよなら、きみ。


さよなら、私。


さよなら……。




そして今年も 桜が散る。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る