第5話
「それじゃあ、前から頼んでた銀たっぷりの折れにくくて何故か軽すぎるカタナを」
「毎度。最後の願いだから聞いたけど、本当にコレだけで良かったのか?」
「もちろん。それで、お代は?」
「仕方ねーなー。銀貨30枚で勘弁しといてやるよ」
「ありがたや〜」
出発の日が来た。あれから、ヒメキとも話していない。今は俺一人で出発の準備をしている。
「後は、食料だな。干し肉ぐらいしか持って行けないけど良いよな」
乾物は日持ちするから、こういう時には本当に有難い。かと言って、干し肉ばかりも飽きるから、何か別の乾物もあれば買いたいが。
「らっしゃい。今日も干し肉?」
「うん。それと、他に日持ちする物ない?」
「えーっと、干し肉以外だと、干した魚と干したイカぐらいしかないね」
「じゃあ、それも追加で。いくら?」
「5日分で銅貨500枚、7日で750枚」
「じゃあ、5日分を2セット頂戴」
「へぇ〜。計算早いもんだね。じゃあ、銅貨1000枚ね」
「はいはい」
「頑張ってね。あんがとさん」
嫌われていると言っても、皆が皆に嫌われている訳じゃない。こうやって、俺等にも優しい人がいる。
「やーっと出て行くのか。せいせいする」
「こらこら、そんな大きな声で事実を言わないの」
「良いじゃん。どうせ親を殺しに行くんだから。人殺しになるんだから」
「まぁ、それもそうね」
どこかで大負けした子供とその母親が嫌味を言ってくる。でも、もうそんな事を言われなくて済む。今日でこの村から出て行くのだから。
「村長、お世話になりました」
「へっ。もう帰ってくるなよ?」
「もちろん。仮に俺が目立っても、この村に居なかったって言いますから。それが最初の契約でしたから」
「覚えてるとはな。ま、せいぜい人殺しの汚名を背負って生きろよ」
「えぇ。俺以外の誰にも殺らせませんよ」
村長も悪い人ではない。口は悪いが。
「ヒメキ。お前も。ほら」
「ありがとう……ございました……」
「おぉ?泣いてるのか?嬉し泣きか?悲し泣きか?」
「うるさい……ないて……ないんだから……」
まぁ、コイツが暗いのは俺とケンカしてるからだろう。
「村長。では」
「達者でな」
そうして、俺達の旅は始まった。ヒメキと仲直りをせず、その他にも色々と課題を残し、大金片手に。
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