第1章 俺が勇者を殺す!?
第1話
「はい。これでまた俺の勝ち。きちんと賭けた分は払えよ?」
子供だけが集まっている夜。俺達は少ないお金を持って大人に内緒で毎晩毎晩少額の賭けをしている。
「ちっ。またお前の勝ちかよ」
「お前等が弱過ぎるんだよ。やる度に全部持ってかれるお前等が悪い」
「分かってるよ」
ちなみに、この村に来てこんな事をやっていると気付き、参戦し始めてもう3年が経過している。おかげで貯まっているお金は普通の子供が持っている額とは思えないぐらいに。
「はい。またあんがとさん」
今日やっているカードでは今までの人生で負けた事がない。と言うより、この村の子供とやりあったが、1度も負けた事がない。
「今日はこれで終わりか?なら、明日で俺は最後だけど、今まで取られた分取り返したければ、明日来いよ。俺に勝てたら全部返してやるよ」
「「「「「おぉ〜!!」」」」」
「でも、負ければきちんと取るもの取らせてもらうからな」
「「「「「えぇ〜」」」」」
「明日終わった時に返せなかった分はきちんと次の朝に親にきちんと取りに行くから」
「「「「「やべ〜!!」」」」」
「んじゃ、また明日な」
「「「「「おう」」」」」
「帰るぞ、ヒメキ」
「分かってるって」
「それで?今日まででいくら稼いだの?」
「銅貨30万枚」
「銀貨にして300枚も!?」
「もちろん、全部回収出来てないけど、明日には回収できるだろ。最悪、あのクソ親父を殺る旅に出るまでには回収するよ」
「ねぇ、やっぱりおじさんも何か意図があるんじゃ……」
「だろうな。だけど、やり方が悪い。だから、昼間に俺らは差別されて、イジメられている。だから、おれがクソ親父を殺して現状を打破する。それだけだ」
旅の途中でクソ親父の意図に気付いても、俺は多分クソ親父とは違うやり方を考え、それを実行するだろう。
「あのさ、お願いがあるんだけど。良いかな?」
「ん?どうした?」
「私って治癒魔法しか今は使えないじゃん?」
「それがお前等の種族、雪精族の得意分野だからな」
「それでさ、私前衛をやりたいんだよね」
「は?」
前々からヒメキは変わっているとは思っていたけど、ここまで変わっているとは思わなかった。
治癒魔法師は大抵後衛、後ろからサポートするのが鉄板だ。
「なんでまた?」
「いや〜。カムを見てると楽しそうだからさ。だからやってみたいな〜って」
「笑顔で言うなよ」
呆れた。本当に呆れた。やってみたい、楽しそうだから。ふざけてるとしか思えない。
「だからさ、明日から前衛のやり方教えてくれる?」
「面倒だからヤダ。と言うか、お前は後衛で充分だろ」
「それ言うならカムも治癒魔法使えるじゃん」
「確かにな。何故か俺はほとんどの魔法が使えるけど、治癒魔法に関してはお前の方が効果高いじゃん。それに、蘇生魔法も練習してるんだろ?」
「それは……そうだけど……」
「なら、お前が前衛やる意味ないじゃん」
「うぅ……」
「という訳で、後衛よろしくね〜」
「ヤダ」
「おいおい……」
本当、手の焼けるヤツだ。17になってもまだ子供みたいな事を言いやがる。
「お前なぁ、前衛やりたいやりたいって言うけどな、今回の旅で無理して死ぬかもしれない。前衛なんて特にだ。それなのに、自分から自分の領域外の事をしても邪魔になるだけだし、はっきり言ってイラッとする。だから、お前は後衛にいろ」
「……」
事実、今度の旅は遊びじゃない。そこら辺をウロウロしている魔族と戦う事にもなりかねない。命と命の真剣なやり取り。それを分かった上で言ってるように聞こえない。
「まぁ、一応程度では教えてやる。護身用としてな」
最低限の譲歩としてこれぐらいはしてやらないといけない。
でも、その言葉を聞いたヒメキの顔はとても明るくなったのが、暗くてもよく分かった。
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