第10話 孤軍奮闘! 雷奈の意地
肉弾戦を得意とする灰色熊の妖魔フリッガーと中距離射程からの攻撃に長けた白イタチの妖魔サバド。
この2体を向こうに回しての
2対1という数的不利な状況ではあったが、
だが、それでも時間の経過と共に
(
専用口座の妖貨が尽きて
そして
(2対1ならまだ何とかなるけど、あの幻術士に加勢されるとさすがにつらい)
さらにはカラスの妖魔がバスハウスの中の
フリッガーがその太い腕で
その隙に
それはすぐにバスケットボール大の燃え盛る火球となってフリッガーを襲った。
しかし横なぎの風のようにサバドの放った光刃がこの火球を打ち落とす。
「チッ!」
戦いの場に
サバドもフリッガーも雷奈のしぶとさに内心で舌を巻いていた。
しかし、現に彼ら二人がかりでも
先ほどまであれだけ殺気立ち怒りのままに
相棒が冷静さを取り戻しつつあることを好機と受け止めたフリッガーは、思い切って
「おい、女。俺たちのもう一人の仲間がどうしているか気にならないか?」
唐突なフリッガーの言葉に
「なんですって?」
フリッガーはニヤリとしてわざとらしく肩をすくめる。
「張り切って戦うのもいいが、もう少し周りに気を配るべきだろうな」
そう言うとフリッガーは横倒しになっているバスハウスの方へ
「……まさか」
フリッガーの意図をすぐに理解したサバドは
目にも止まらぬ身のこなしでサバドが繰り出した光刃は唸りを上げて
すんでのところで風を切る光の刃は彼女の鼻先を駆け抜けていく。
「うぐっ!」
護符を持った両手を顔の前で交差させて顔面への直撃を防いだ
「きゃあっ!」
悲鳴を上げて吹き飛ぶ
「今だ! 相棒!」
「この瞬間を待ってたぜ」
その両手の上に鋭い輝きを放つ光の大鎌が姿を現す。
「くたばっちまいな!」
サバドは
光の大鎌はブンッと恐ろしげな風切り音をあげて
「
サバドは勝利を確信して拳を握り締め、フリッガーも嬉々とした表情を浮かべた。
だが、彼らの喜びは水泡に帰す。
すると
漆黒の手の平の上に、
それでも光の大鎌は
だが次の瞬間、雷奈はカッと両目を見開くと両手に護符を持った。
「はあっ!」
そして自分の首を切り落とそうとする大鎌の刃を左右の手の平で上下から挟み込むようにしてガッチリと
「な、なんだと?」
これには大鎌を放ったサバドのみならずフリッガーも
わずかでも
「ナッ……メんなぁ!」
気合いの声とともに
大鎌は大きく弧を描いてサバドとフリッガー目掛けて飛んでいく。
「なんて女だ。クソッ!」
サバドとフリッガーは悪態をついてその場から飛び退いていく。
二人が避けた光の刃はクルクルと回転しながら当て所なく再び宙に舞い上がった。
だが、
間髪入れずに
「くぅっ!」
呼吸も出来ないほどの強烈な風圧に耐え、
フリッガーはほんの一瞬だけ呆気にとられた顔を見せたが、その一瞬が命取りとなった。
「うおっ!」
空中で体の自由を失ったフリッガーは必死に体勢を立て直そうともがくが、そんな相棒の向こう側に迫るものを見てサバドは思わず絶叫した。
「フ、フリッガァァァァァァ!」
先ほど
「ぐぅっ!」
巨大な光の鎌はフリッガーの肩口からバッサリと腕を切り取って奪い去った。
鮮血が飛び散り、無残にちぎれた太い毛むくじゃらの腕が空中でくるくると回転する。
利き腕を失ったフリッガーは受身もままならずに地面に落下し、体を
「うがああああ!」
潮目が変わり、戦局が一気に傾き始める。
「はぁぁぁぁぁぁっ!」
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