超一流冒険者にボクはなりたくない!

@taro_zaemon

プロローグ

「はい。コレで手続きは完了です。お名前に間違いが無いか確認してくださいね」


 そう言って手渡された証書に目を通す。

エミリオ・ティンバーレイク。うん、間違いない。


「大丈夫です。問題ありません」

「良かったです。では、こちらを」


 紙で作られたドッグタグ。


「それを目に見える所につけておいてくださいね。階級の説明はしますか?」

「はい。お願いします」


 そうお願いすると、受付のお姉さんは咳払いを一つして語り始めてくれた。


「そのドッグタグは冒険者の階級を表していて、低い順から紙、布、革、木、石、鉄、鋼、銅、銀、金、白金、金剛と変わっていきます。全部で十二級ですね。他にも藍玉、翠玉、紅玉などが付随することがあります。この付随するものが、その冒険者が何を得意とするのかを表しています。紅玉であれば討伐、翠玉であれば採集、藍玉であれば護衛と言った感じですね。ですので、まずは階級を一つ上げることが出来るよう、努力することをお薦めします」


 受付のお姉さんは、最後に「ペーパーだと舐められますから」と付け加えた。なるほど。


「どうすれば階級を上げられるのですか」


 すると、お姉さんは表情を曇らせながら答えた。


「実は、明確な基準は無いんです。まずは依頼をこなしていただくのが最短の道かと思います。早速ですが、なにか依頼をお引き受けになりますか?こちらなど良いと思うのですが……」


 流されたりはせずお姉さんの問いを断り、一度ロビーへと戻る。ボクはちゃんと「いいえ」が言える子だ。


「よう!お前さん、冒険者になったばかりだよな?」

「はい。そうですけど……」


 ロビーの椅子に座ると同時に隣の席へと座って来た男。


「オレはカヤザ。見ての通り木(ウッド)だ」


 そう言ってドッグタグを見せる。


「は、はじめまして。エミリオです」

「まぁ、堅苦しい話は抜きにしようや。お前さん、っとエミリオって言ったっけ。早く布(クロス)に上がりたいだろ。まぁまぁ、皆まで言うな。実はな、紙から布への昇格はかなり難しいんだ。新人がこの先やっていけるかを試しているんだろうさ」


 そう言ってカヤザさんは煙草に火をつける。


「エミリオはいくつだ?」

「数えで十四です」

「そうか。オレは二十一だ」


 そう言い、一服を入れるカヤザさん。そして彼はおもむろに言い放った。


「どうだい?オレたちとオーク討伐に行かねぇか?確かにお前さんには荷が重いかもだが、上手く行けば階級を」

「あ、結構です」


 固まるカヤザさん。


「仰るとおり、ボクにはまだ早すぎると思うんですよねぇ。だから、地味な依頼を地道にこなしていく事にします」


 目先の欲にとらわれるのは愚の骨頂。ここは我慢の一手かな。何しろ話が旨過ぎる。


「そうかい。じゃあ、この話は他のルーキーと行くことにして良いんだな?」


 笑顔を持って答えとし、受付の直ぐ側にある依頼掲示板へと歩を進める。

んー……。どれが良いかな。まだ、装備も充分じゃないし、危ない橋は渡りたくないなぁ。

その中から二枚をちぎり取り、受付へと持っていく。


「あ、お決めになりましたか?えーと…薬草の採集と面倒鶏の肉の採取ですね。始めてには調度良いかもしれません。頑張ってくださいね」


 渡した紙に判を押し、ボクに笑顔で返してくれた。

さて、お金を稼ぎに行きますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る