続・明日自慢出来る（かも知れない）話

薔薇の名前③ 美人は薔薇の名前になりやすい？

　薔薇の歴史を語るだけで二回も費（つい）やしてしまった当シリーズ。第三回目の今回からは、当初の目的通り薔薇の名前を紹介出来そうです。

　前回紹介した通り、人の手によって作り出された薔薇には様々な名前が付けられています。童話に因（ちな）む「シンデレラ」から「ラスベガス」のような地名と、薔薇の名前になった事物は多岐に渡ります。しかし、人名ほど薔薇の名に多用されたものはないでしょう。

　歴史と格調を併せ持つ薔薇は、王族や権力者に捧げられることが多い花です。現に薔薇の世界には、日本の皇族の方々から名前を頂いた品種も存在します。

　若くして亡くなったダイアナ元イギリス皇太子（こうたいし）妃（ひ）は、二つの薔薇に名前を遺しています。

　1997年にイギリスで作出（さくしゅつ）された「プリンセス・オブ・ウェールズ」は、芯を抱えるように白く丸い花びらを咲かせます。雨や病気に強い一方で、暑さには弱いと言う特徴を持つ花です。

　一方、ダイアナ妃（ひ）が亡くなった翌年に作出（さくしゅつ）されたのが、「ダイアナ・プリンセス・オブ・ウェールズ」です。

　1998年にアメリカで誕生したこの薔薇は、第一回目に紹介した剣弁（けんべん）高芯（こうしん）咲（ざ）きの花を付けます。花びらはクリーム色とピンクのツートンカラーで、仄（ほの）かに香ると言います。現在は契約の関係から、「エレガント・レディ」と言う名前で販売されているそうです。

　かつてダイアナ妃（ひ）の義母（ぎぼ）であったエリザベス女王も、「クイーン・エリザベス」と言う薔薇を捧げられています。

　1954年、アメリカで誕生したこの薔薇は、エリザベス女王の戴冠（たいかん）を記念して名付けられたと言います。ピンク色の花は儚げな印象を与えますが、実際は薔薇の中でも屈指の強さを持つそうです。

　モナコ公国の公妃（こうひ）グレース・ケリーも、二つの薔薇に名前を遺しています。

　グレース・ケリーはハリウッド女優としても知られた人物で、1955年にはアカデミー主演女優賞も獲得しています。しかし翌1956年にモナコ公国の大公（たいこう）レーニエ三世と結婚し、20代にして女優業を引退しました。大公との間には一男二女を授かりましたが、1982年、不慮の事故により52年の生涯に幕を下ろしました。

　1956年に作出（さくしゅつ）された「グレイス・ドゥ・モナコ」は、大公との結婚式のために用意された薔薇です。桜色の花が可憐な印象を与える品種で、強い香りを放つと言います。

　もう一つの「プランセス・ドゥ・モナコ」は、グレイス・ケリーが亡くなった1982年に作出（さくしゅつ）されました。桃色に縁取（ふちど）られた白い花びらは、どことなくモナコの国旗を彷彿とさせます。

　グレース・ケリーの夫レーニエ三世も、即位50周年記念に薔薇を捧げられています。「ジュビレ・デュ・プランス・ドゥ・モナコ」と名付けられたこの薔薇は、2000年にフランスで作出（さくしゅつ）されました。外側に行くにつれて白から赤へと変色する花びらは、やはりモナコの国旗を象徴していると言います。

　グレース・ケリー同様、伝説的なハリウッド女優であるイングリッド・バーグマンも、薔薇の名前に採用されています。

　スウェーデン出身のバーグマンは、1944年の「ガス燈（とう）」と1956年の「追想」でアカデミー主演女優賞を、1974年の「オリエント急行殺人事件」でアカデミー助演女優賞を獲得しています。

　1942年に出演した「カサブランカ」には、「君の瞳に乾杯」と言う有名な台詞（せりふ）が登場します。主演のハンフリー・ボガートにこの名台詞（めいぜりふ）を告げられたのが、誰であろうバーグマンです。

　1984年にデンマークで作出（さくしゅつ）された「イングリッド・バーグマン」は、まさに「薔薇」と言った真紅の花です。人々のイメージを具現化したような完成度から、世界（せかい）バラ会（かい）連合（れんごう）の殿堂入りを果たしています。

　世界（せかい）バラ会連合（れんごう）はイギリスのロンドンに本拠地を置く組織で、40近い国々の愛好会が加盟していると言います。彼等は三年に一回、世界（せかい）バラ会議（かいぎ）を開催し、殿堂入りのバラを選出しているそうです。

　世界（せかい）バラ会議（かいぎ）は2015年までに16回行われており、16の品種が殿堂入りを果たしています。先ほど名前を出した「クイーン・エリザベス」や、前回紹介した「シュネーヴィットヘン」もその内の一つです。

　参考資料：別冊NHK趣味の園芸　バラ大百科　選ぶ、育てる、咲かせる

　　　　　　　　　　　　上田善弘、河合伸志監修　日本放送出版協会刊

　　　　　　京成バラ園芸株式会社　公式ホームページ

　　　　　　　　　　　　http://www.keiseirose.co.jp/index.htm

　　　　　　NHK出版　みんなの趣味の園芸　公式ホームページ

　　　　　　　　　　　　https://www.shuminoengei.jp/rose/