ロキ様に異世界に誘われました
漆板
第1話
第1話
「あーーー、なんか面白いことねぇかなぁ」
授業をサボり、学校の屋上で横になりながら黒瀬白夜はため息まじりに呟いていた。
この男、弁護士の父と元アスリートの母から生まれたため、頭が良く、運動神経抜群、そして顔もまぁまぁイケメンというほぼ完璧人間なのだが、自分の興味のあることにしか全力を出さないために宝の持ち腐れになっているという残念な人間である。
中学生の時までは真面目に勉強し、バスケ部に入り、親の期待に応え続けていたが、高校生になってから完全にやる気がなくなってしまい、成績も悪く、部活にも入らないというダメ人間になってしまった。
両親も初めの頃は「やればできるんだから」「今ならまだ間に合う」などと言ってやる気を出させようと頑張っていたものの、だんだん何も言わなくなり、何も期待しなくなっていった。
一時、心理学や民法に興味を持ち、熱心に調べていたこともあったが、やはり自分のやりたいこととは違ったようですぐに飽きてしまった。
そして今、白夜は自分が熱心になれるくらい面白そうなこと、楽しそうなことを探しているのであった。
「マンガみたいに面白いこと起きねぇかなぁ、なんでもいいから暇つぶしになるようなことねぇかなぁ」
【わかるわかる、なんか刺激が足りないよね今の世の中】
「だよなー、平和なのはいいけど平和すぎるのもつまんねぇよな...って誰だ!?」
そう言って周囲を見回すものの人影は見当たらない。気のせいだったのだろうと思い、再び横になった。のだが、
【気のせいじゃないよー、まぁ今の君には見えないだろうけどね。】
「おい、喧嘩売ってんのか?どこに隠れてんだ?」
【う、うーん、見えないってのはそういう意味じゃないんだけど...。よしわかった、とりあえず目を瞑ってみて?】
「なんで俺が見ず知らずのやつの言うこと聞かなきゃならないんだ?なんだ、目を閉じいる間に襲う気なんじゃないのか?笑」
【いやいやいや、特になんの恨みもないし。君自身、恨みを買うようなことをした覚えがないだろう?いつも一人でいるわけだし】
「確かに...。なんかちょっとカチンとくるけどごもっともだ。」
【というわけだし、僕を信じて目を閉じてみてよ!ねっ!】
「本当に大丈夫なんだろうな...」
そう呟きながら白夜は目を閉じた。
すると目を閉じているはずなのに視界が真っ白になり、そこに1人の少年が現れた。
【やぁやぁ、初めまして!僕が見えるかい?】
「あ、あぁ、見えるけど.....。これは一体どうなってる?」
【よし、じゃあ順番に説明していくね。まずは僕のことからだ。僕の名前はロキ、一応神様だよ!】
「ロキ...っていうと、北欧神話に出てくる悪戯好きのやつか?」
【うん、その認識であってるよ。悪戯好きというより面白いことが好きなだけなんだけどね...】
「それで、なんで俺がその神様と話してるんだ?」
【そうそう、そこが本題なんだ。今僕はとても悩んでいてね。この世界は平和すぎて観察していてもつまらない。どーにかして僕の退屈をしのげないだろうかと...】
【そこで一つ面白いことを思いついたんだ!この世界がつまらないならここじゃない世界を見ればいいんじゃないかって】
「ほぅほぅ、それで?」
【そうは思いついたものの違う世界を観察するなんてことそう簡単にはいかなくてね〜、僕の力じゃ他の世界を覗くことはできなかったんだ。何かを媒体にしないと...ね】
「それで?その媒体の役目をやって欲しくて俺に話しかけてきたってことか?」
【さっすが!理解が早くて助かるよ】
「俗に言う異世界召喚ってヤツか、けどもし俺がそれを承諾して異世界に行ったとして、帰ってくることはできるのか?」
【残念ながら僕の力じゃ向こうの世界に飛ばすことはできてもこっちの世界に引っ張ってくることはできない。】
「そうか...、正直、俺はこの話承諾してもいいと考えてる。かなり面白そうだしな。でも、こっちの世界で失踪事件なんて騒がれてこれ以上親に迷惑を掛けるのは避けたいと思ってる。」
【あ、それなら問題ないよ。向こうに飛ばした人間は元からこっちの世界にはいななったことになるから】
「なるほど.....な。それなら安心したぜ。こんな面白そうな機会、逃すわけにはいかないだろ!」
【よし、決まりだね!じゃあまずは僕のいる神域に君を連れてくるよ。心の準備はいいかい?】
「あぁ、やってくれ。」
そう言いながら白夜は目を開けた。白夜の周りが紫色の光に包まれ、カッ!と光った。そして光が収まった時にはドアのない真っ白な部屋にいた。
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