「東宮季紗」編②

 東宮ひがしみや季紗きさ、17歳。

 亜麻色めいて光り輝く、明るいロングヘアーに、透き通った夜闇の色の瞳。

 丘の上の洋館でメイドさんと暮らす、本物のお嬢様で……純情可憐を絵に描いたような清らかな美少女。


 昼休みの生徒会室で、その美少女に、由理ゆーりは唇を押し当てられ、動揺した。


「んぷっ、ちゅぅ。むぅ……ふぁ。由理……もっとキス……ちゅっ」


「むぅ、ふぅ……ん!? んっ、ん……うぅー♪」


 制服姿の季紗に押し倒されそうになりながら、由理は唾液を吸われる。

 でも、それ自体はいつものことで。


 由理が動揺してるのは。


(す、好きって!? 季紗、どういうこと!?)


 寝ぼけまなこな季紗の、清純な顔が間近。

 瞳に愛欲ハートマークを浮かべた彼女は、明らかに目覚めてないのだけど。


「ちゅっ♪ んふ……ちゅぅぅー♪ ちゅぷっ、ちゅぷぅ……♪ ふふ、由理。えっちなキスしよ♪」


 百合キスは、全部を伝えてしまうので。

 ずぷずぷ唇に入ってくる舌と、喉奥まで流し込まれる甘い唾液……季紗の、女の子の味に、鈍感な由理も、


(ふぇぇ!? き、季紗……私を好きって、もしかしなくても性的な意味で!? 本気なの!?)


「ずちゅ♪ んぢゅ、はぅ♪ や、やぁ♪ 季紗、目を……覚ましてぇ……ん。う、ふぁぁ……っ♪」


 昼休みの半分くらい、時間と唾液を季紗に吸われるのだった。


 ※ ※ ※


「道理で。起きたらお口の中、由理の味でいっぱいだぁ♪って思ったのよね」


 やっと正気に戻った季紗、唇をなぞりながら微かに赤くなる。

 吸われに吸われた由理の方は、微かじゃなく赤面して息を切らせてる。


「ば、ばかぁ……♪ こ、こんなにキスして、やっと目が覚めるとかっ……」


 眠れるお姫様を起こすのは、甘い接吻くちづけと相場は決まっているけれど。

 お姫様の方から、こんなにちゅぷちゅぷキスされるとは。


(んっ……でも眠ってる季紗、綺麗だったな。ホントにお姫様のよう)


 唇の妖しい熱が心臓を弾ませる。


(季紗……覚えてないのかな。そ、その……私のコト、好きとかって言ったの……)


 けろりとした表情の季紗を見てると、やっぱりさっきは寝ぼけてたみたい。

 でも、あの言葉が本気だったとしたら……?


 ドキンッ。

 

 な、なに考えてるのよ私は、と、由理は頭を振った。


「そ、それよりっ。昼休み終わっちゃうじゃない。話が有って呼んだんでしょーが!?」


「わぁ、赤い顔で怒る由理……生ツンデレさんだぁ♪」


「な、何を言って……っ。もぉーっ!」


 照れ怒る由理に、季紗は真面目な顔で、寝ぼけて唇奪ったことを謝って。


「ごめんね。キスしたお詫びに……由理の好きなだけキスしていいよ?」


「結局キスなの!?」


 でも由理、もじもじして。


「……す、するけどさ」


 今度は由理から、形の良い季紗のあごを指でくいっとして、もう片手で抱き締めて。

 ちゅっ……♪と唇を重ねた。


「むふぅ……んぶ。ぬぷっ、ちゅるぅ……♪」


「ちゅ……♪ んはぅ、ふぅ……♪ んむ、んん……♪」


 そのまま、生徒会室での百合の饗宴……女子高生2人の秘密のキスは。

 次の授業の予鈴が鳴るのも気付かず……書類を取りにきた千歌流ちかるが「な、なにをやってるんですか学校でぇぇぇー!?」と赤面するまで続いた。


 ※ ※ ※


 副会長、廊下を走ってはいけません!

 授業にちょっぴり遅刻、教室へ急ぐ季紗と由理。


 その途中で、由理が季紗に頼まれたのは。


「私が……生徒会に?」

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