その百合にくちづけを(前編)

「ちゅっ……くちゅぅ。ずぷぅ、ふ……♪」


 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」では、コーヒーや紅茶をメイドさんが口移ししてくれる。

 普通に飲みたくても、「キス、嫌ですか……?」と泣きそうな目で見られちゃう。


「ちゅっ♪ んむぅ、くぷぷぅ♪ るぷ、にゅむちゅ……♪」


 動き易いセミロングの髪にツリ目な由理ゆーり

 ノンケだった彼女も、今では立派に……お嬢様の喉まで舌を挿入して、唾液とコーヒーをラブミックス。


「ふぽ、ずぷ、ずぷぅ♪ んむぅ、くぅ……♪」


「ちゅぱ、ちゅぱぁ……♪ んずぶぅ……♪」


 そんな由理へ、美緒奈みおな季紗きさから。

 お仕事終わった後、2人が渡してきたものは。


「百合ゲーム?」


「そっ。由理もレズメイドとして成長してるしさ、興味出てきたんじゃねーかな?って思って」


 にこにこ良い笑顔の美緒奈から、手渡されたパッケージを見て、由理は。

 美緒奈のツインテールをぎゅっと握って、上下に振るお仕置き。


「ふふっ、美緒奈さん? 18禁って書いてあるのは気のせいかしらー?」


「な、なんだよー!? 『そ○花』は名作なんだぞ! エロゲだからとか、そんな理由で偏見抱くなよな!」


「そういう問題じゃないっての!?」


 高校1年生、16歳の美緒奈と、2年生で17歳の由理に季紗。

 エロゲをやっては、いけません。


 けれど季紗、見た目は清純派アイドル顔負けの可憐な美貌に、羞じらいを浮かべた破壊力抜群の表情で。


「でもえっちなの、興味湧いちゃうよね? ふふっ♪」


「うぐ、いや、私は別に……!?」


 そう言いつつ、由理も今では毎日女の子同士ディープキスしたり、お風呂でぬるぬるしたり……色々してるわけで。

 エッチなゲームがどれくらいエッチなのか、確かめてみるのも社会勉強かなとか、思ったり思わなかったり。


「ま、まぁ、貸してくれるっていうなら? 私は全っ然、これっぽちも興味無いんだけど?」


 赤く頬を染め、腕を組んでそっぽを向きながらの正統ツンデレスタイルを貫きながら。

 貸してくれてもいいのよ?とチラ見してくる由理さん。


「2人が、同じ話題が欲しいってなら。可哀想だし、や、やってあげてもいいかなって」


 要約すると、由理もエロゲに興味有りです。

 にやにや、にやにやと悪い笑みの美緒奈に季紗、赤面しながらエロゲを受け取る由理へ。


「にしし、聖ミ○女に1名様、ご案内ー♪」


「ふふ、感想聞かせてね? どのエッチシーンにときめいたか聞かせてね!!」


 ……良い子の皆さんは、友達が貸してくれるっていっても、エロゲやっちゃダメですよ?


 ※ ※ ※


「それで? こっそりパソコン使ってたの?」


 深夜の「リトル・ガーデン」。

 エロゲやってるところを、リズさんに見つかった。


 じー、と睨まれて由理動揺。


「ち、違うのこれは! あくまで勉強であって!?」


「なんの勉強よ、なんの……」


 制服半脱ぎの美少女同士が絡み合うHなパッケージを手に、赤くなるリズさん。


「ま、まだ由理には早いんだから。没収よ、没収!」


 えー!?と抗議する(エロゲやりたかったみたい)由理へ、お姉さんらしくリズが叱る。


「エッチなゲームは18歳になってから! 来年まで待ちなさいっ。いいこと?」


 リズさんに怒られてはしょうがない。

 由理は未練たっぷりながら引き下がり、エロゲを諦めてベッドへ。


 ……さて、一人になったリズ。

 女の子同士のイケない場面が映ったままのパソコンをチラッと見て、頬を染める。


「……私は18歳だから、いいわよね?」


 由理や季紗、美緒奈がプレイしても良いものなのか。

 お姉さんとしてチェックするため……と言い訳して、胸をドキドキさせながらマウスに手を伸ばした。


 ※ ※ ※


「ふわぁぁ、こ、こんなコトまでっ……!?」


 音量絞ってもパソコンからわずかに漏れる、悩ましい声。

 画面の中では、ツインテールの女の子が洋服屋の試着室内で、金髪のお姉さまへ……。


「や、やっぱり気持ちいいのかしら。こういうのって……」


 巨乳な胸の下、心臓がどっくんどっくん。

 頬が熱くなるリズ。


「きゃぁぁ!? だ、だめよ高校生がこんな!? は、裸で抱き合っていいのはお風呂の中だけなんだからぁ!?」


 脱ぎ癖のあるリズさん、由理のベッドへ裸で潜り込む自分のことは棚に上げて。

 エッチな百合ゲームに夢中。


 そんな金髪美少女の姿を、由理さんが見てた。


「じー……」


「ち、違うのぉぉ!? 興味あるわけじゃなくて、これも勉強と思ってぇ!!」


 意識しちゃったのか。

 ……その日からリズさんが、お風呂一緒に入ったり、全裸でベッドに入って来たり、しなくなった。


《続く》

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