女の汗は甘いって、偉い人が言ってたから。

 開店前の百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」。

 いつもの朝礼風景。


「はい、じゃあ、いつもの歯磨きチェックよ。2人一組でキスしてね。……ちゅっ♪」


 バイトリーダーである巨乳金髪メイドのリズが、季紗きさと抱き合って百合キス。


「んっ♪ ちゅぷぅ……ちゅぶ。ふぁ、むぅぅ♪ どうかな、リズさん。今日はアップルミントティーを飲んでおいたの♪」


「ちゅぅ、んむぅ♪ ん、季紗ちゃん合格♪ ほのかに甘くて爽やかな清涼感があって……♪」


 2人にならって、他の百合メイドも、めいめいにカップルを組んで百合キス。

 ちゅぷ、ちゅぷ、ぴちゅっ♪

 みんなマジメな子だから、一生懸命百合キスして、歯磨きチェックをするよ!


「さ、さて。じゃあ、私達も……しよっか」


 ちょっぴり赤面して視線を泳がせながら、由理ゆーり美緒奈みおなの前に。


 だのに、おや?

 美緒奈、赤毛なツインテールの毛先をいじりながら、すす、と後ずさり。


 今日の美緒奈はあんまり、キスしたくなさそう?

 由理、避けられた気がしてむっとする。


「な、なによ。私とじゃ、いやだっての?」


「ち、違うってば。あたしも、由理とキスしたい……あわわ、じゃなくて! キス、してやってもいいんだけどぉ!?」


 美緒奈、恥ずかしがって。

 自分の人さし指と人さし指をツンツン、キスさせながら。


「今日、体育の授業がマラソンだったから……そのぉ、あたし、汗臭い、かも……?」


 汗の匂いに羞じらう、美緒奈は乙女なのです。

 小学生な身長だけど、とっても思春期。


 小悪魔笑顔で強がって、ちらりと由理を見上げる。


「そ、それともなに? 由理ったらさ、スーパー美少女な美緒奈様の汗を、くんかくんかしたいわけぇ?」


「……」


 由理が……真っ赤になった。

 今までなら、「はぁ? なにバカなこと言って……」となるところなのに!

 美緒奈の薫りを肺いっぱいに堪能したり、ペロペロ舐めてみたりしたい……でも恥ずかしくて言えないっ!という表情だ。


「ば、ばば、ばか。な、なななにをバカなこと、い、言って……!?」


「ど、動揺すんなこらぁ!?」


 2人真っ赤になって慌てるツンデレ百合乙女達。


「はーい、歯磨きチェックはあと5分ね。ちゅぷぅ……♪」


 リズさんの声に、由理達さらに焦燥。


「と、とにかく! あ、汗臭いんなら、なおのことチェックしないと! お客様の前に立てないでしょ。観念しなさい、美緒奈!」


「ば、ばかぁ、抱き締めようとすんなぁ!? ほ、ホントに汗臭いんだぞ! 卒倒するぞ!?」


「こ、こら、逃げるなっての!?」


 イチャイチャしてるように見えますか?

 ……うん、そうにしか見えない。


 恥ずかしがる美緒奈を、由理が捕まえて、がっちり、ぎゅぎゅっと抱き締めて。


「ちゅ、ちゅぷぅぅ……」


 まだ羞恥を残してはいるけど……美緒奈へ、熱く接吻。


「ふぷぅぅぅ!? ん、く……♪」


 れろ、れろと、熱い舌が触れ合って……お口の中は、火傷寸前。

 唾液を交換しながら、赤い顔で、由理は。


「ちゅ、んむ……♪ ほ、ほら、やっぱり。美緒奈の匂い、いい匂いだよ……」


 花のような、香り。

 立ち昇る甘い香りを、由理にいっぱい吸われて、つい意識しちゃいながら。


 美緒奈は、照れてそっぽを向いて。


「……あんた、変わった」


 ますます、好きになっちゃうじゃん……なんて、言ってはやらないけど。

 胸がどうしようもなく火照るのを、美緒奈は自覚するのだった。 


 

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