百合キスは世代(とき)を越えて④ +番外編

 流れたままのシャワーの音が、痛いくらいの沈黙を、より際立たせる。


「……リズさん。今、なんて……?」


 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」のお風呂の中。

 リズと由理ゆーりが裸で身体を洗い合っていたところへ、店主マスターと、酔った遥香はるかお姉さんがやってきて……。


「あ、あら。私、まずいこと言っちゃったかしら……」


 遥香女史が、酔いのさめた様子で戸惑う。


「リズ、もしかして、由理達に話してないのか?」


 艶のある紫の髪を洗ってる最中だった、店主の透お姉さん、静かにリズへたずねる。


「……はい」


 その言葉にリズは唇を噛んだ後、意を決したように顔を上げて。

 呆然とする由理を見つめて、はっきりと告げた。


「来年の春、高校を卒業したら……私は、イギリスの大学へ行くわ。きっと日本へは、数年は帰らない」


 ※ ※ ※


 夏休みにイギリスの実家へ一時帰国したリズさん。

 実家で、進路を話し合ったのは聞いてた。


 それと、向こうでも遥香さんと会ったのだとか。

 世界中に、百合メイド喫茶の支店を作る。そんな遥香さんの夢を手伝わないか、そう誘われたのだという。

 そのためにも、母国イギリスの名門大学へ……。


「ねぇねぇリズちゃん、夏休みにイギリスで話したこと、考えてくれた?」


 今夜、お風呂の中で何気なく、遥香さんがリズさんへたずねたのがきっかけ。


(どうして、教えてくれなかったの……?)


 由理は、目の前が真っ暗になるのを感じる。

 母のことをたずねるどころじゃ、なくなってしまった。


 そうだ、この感覚……初めてじゃない。

 母に、ひとりで天国へいってしまったお母さんに、置いて行かれた、あの時といっしょの感覚。


「また……私は、独りになるの……?」


 頬を伝った水滴は、たぶんシャワーじゃなくて。


「ち、違うわ由理。私が言い出せなかったのは……」


「もういいッ! リズさんの、ばかぁぁぁぁッ……!!」


 気付けば由理は泣きながら、浴室を飛び出していた。










【本編がシリアスなところで続くので、番外編!】


 番外編「サウナに行ってみた!」


 お休みの日。

 由理、季紗きさ美緒奈みおなの百合メイド3人で、サウナ風呂に行ってみた。


「よくお風呂いっしょに入るけど……たまには気分変えてサウナにしよ♪」


 と、季紗の発案だ。

 そしてそして。サウナ風呂で服を脱いで、裸にバスタオル1枚巻いた格好の3人。濃厚蒸気に包まれながら、やることはもちろん?


「ちゅぷぅぅ♪ むぅ、ふぁぅ……。んっ、くぷ……ぬちゅ♪ ふふ、キスしながらだと、もっとカラダが火照ってくるね♪」


 サウナの中で、百合乙女3人。やっぱりすることは、百合キスです。


「んっ……。ちゅぷぅ、ずぷるぅ♪」


 美緒奈と季紗に、交互に唇を吸われながら由理。


「だ、だいじょうぶ、美緒奈? 顔が、なんか赤いけど」


「う、うっせー!? キスにドキドキしてるとかじゃねーから。サウナで、のぼせてるだけなんだからぁ!?」


「だ、だったらキスやめればいいじゃん! んむぅ!? ちゅぷぅぅ……♪」


「はぁ……はぁ……。由理、わかってないよぅ」


 とろーんと欲情した瞳の季紗、自分も由理の頬に額に口づけして、裸のカラダをすり寄せてきながら、


「サウナは何をする場所? 汗をかく場所だよ! だからキスで興奮して、もっと汗だくになるのは、合理的だと思うの♪」


 ぬるっ。バスタオルで隠れてない部分……季紗の胸と腕が、程よく汗ばんだ珠の肌が、由理に押し当てられる。


「ちゅっ……♪ さあ、由理、美緒奈ちゃん。いっぱいぬるぬるしようね♪」


「……だめぇ、由理。あたし、息が苦しくなって……。お願い、鎮めてぇ……♪ ちゅぅ、ずっぷぅぅ……♪」


「ひぁぁ!? ふ、ふたりとも落ち着いてぇ!? 顔の赤さが、危険域よ!?」


 ……そのまま3人、眼を回すまで百合キスして。

 お店の人に怒られたのでした。


 良い子のみんな、百合キスはサウナの外でしましょうね?

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