百合キスは世代(とき)を越えて①

 OG会を終えて、後片付け、お店のお掃除の後。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」の従業員は、住み込みの由理ゆーりとリズを残して家路につく。


 でも、その前に。


「ちゅ……♪ ちゅむ、んぷぅ。んっ……くぷっ、ふぅっ、ちゅぅぅ♪」


「ふぅぅ……んむぅ。ふぅ……んうぅぅ!?」


 また明日ね、は百合キスで。

 さらさらロングヘアの可憐な美少女メイド季紗きさが、由理に抱き付いてお口を吸っていた。


「ぷはっ……はぁはぁ♪ このままベッドへGO♪したいけど、おうち帰らないと。また明日、学校で結ばれようね♪ ……ちゅっ♪」


「んぷ。……結ばれない、結ばれない」


 季紗と10分くらいキスした後は、なんだかムッとしながら順番待ちしていた美緒奈みおなに、唇を捧げられる。


「もー、季紗姉との百合キス長すぎだぞ由理。キ、キスしねーと帰れないんだからさぁ、あたしの都合も考えろよな」


「いや、そんなルール有った? ……ちゅぷぅぅ!?」


 待ちきれなかったと言わんばかりの、美緒奈様の愛ある接吻。

 舌遣いこそたどたどしいけど情熱的な、赤く頬を染めたロリメイドの一生懸命なキス。


 早く帰る気ゼロだ。


「ちゅっ♪ ずぶっ、るぷぅぅ♪ んっ……ふぁ、にゅぷぅぅ……♪ ど、どう由理? 美緒奈様の味で……いい夢、見られそうでしょ……?」


「ば、ばかぁ……。こ、こんなキスばっかりしたら……えっちな夢見ちゃう……」


 ドキドキ。大きな心音は、由理と美緒奈どちらのものか。

 美緒奈が羞じらい爆発の、初夜の花嫁みたいな表情で。


「い、いいよ。あたしで……えっちな夢見ても」


「ちゅぷっ……んくぅ! み、美緒奈のばかっ。そんなの、イケないん、だからぁ……っ♪」


 そんな甘々な百合キスを見て、まだ帰ってなかった季紗も(また)うずうずしてきた様子。


「発情してる2人とも……可愛い♪ 私も百合キスする♪」


 こうなると後は……分かりますね?


「じゅぷっ……ずぷぅ♪ ぐっぷ、ずぷぅ……。ずぶっ、るじゅる。ずちゅぅぅ……♪」


「ふぁ、んあぁぁん♪ ふぅ、くぅぅっ♪ こ、こら季紗。胸、揉んじゃダメぇ……♪」


「ちゅ、ちゅぷっ♪ えへへ、つい……♪」


「き、季紗姉ずるい。じゃあ、あたしは由理のパンツに……」


「ゆ、指入れるなぁぁ♪ んくぁ、ふぁぁぁ……♪」


 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」では、よくあること。

 なので、はよ帰れとかツッコまないであげてほしい。


 ※ ※ ※


「いやー、いっぱいキスしたね! じゃあ今度こそ、また明日ね♪」


「あ、明日はもっと、美緒奈様とキスだかんな。覚悟しとけよ!?」


 やっと帰った季紗と美緒奈。

 2人を見送り、由理は、唇に指で触れながら。


「どうしよう……。唇が……熱いよ」


 残り香みたいな微熱が疼いて……もっと、百合キスしたい、なんて。

 すっかり百合乙女な由理さんである。


(お母さんも、うちのお店で働いてたんだとしたら。こんな風にいっぱい、百合キスしたのかな?)


 こんな素敵な行為、直接教えて欲しかったな、とか。亡き母に想いを馳せたところで。


 待てこれノンケの発想じゃないよ、と気付いて由理はガクッと、床に座り込んでショック受ける。


「うぅぅ、お母さん……。私もう、後戻りできないカモ……」


 母のことを知りたいような、知るのが怖いような。

 複雑な気持ちで、まずは店主マスターに話を聞いてみようと思うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る