先輩が来た!⑤ 思い出の、ケーキ。

「ここで先輩がたへ、私達百合メイドからサプライズプレゼントですわ♪」


 宴もたけなわの「リトル・ガーデン」OG会。

 金髪巨乳メイドリズさんが宣言して、お姉さま達の注目を集める。


「サプライズプレゼントだって。美緒奈みおな、知ってた?」


 そんなの準備してるとは聞いてなかった由理ゆーり、隣の美緒奈にたずねると、


「あれ、言ってなかった? 季紗きさねえの発案でさー」

「季紗ね……。その時点で嫌な予感しかしないよ」


 その季紗は、いつの間にか姿が見えないけれど。

 OGの奥様、お姉さま達が見守る中、厨房から押されてくる大きな台車。

 非常勤百合メイドの宮野さんと早乙女さんが仲良く、時々キスしたりいちゃつきながら押してくるその台車の上は、白いシーツで隠されているけれど……?


 リズ、にこっと笑ってシーツをオープン。


「うちのお店伝統の! 『乙女ケーキ』です♪」


 中には裸の季紗。

 珠の柔肌に純白のホイップクリームや赤い苺を直接乗せて、ピンクのリボンで可愛くデコレートして……。


「ふふっ、プレゼントは私です♪ どうぞ、召し上がれ?」

「女体盛りだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 由理が叫んだ。


「む、違うわ由理!」


 リズがすかさず真顔で返す。


「これは『乙女ケーキ』! 日本にクリスマス文化が根付いた頃からずっと、うちのお店で続く、それはもう由緒正しいケーキなのよ!?」

「女体盛りは女体盛りでしょ!?」


 さて。こんな独創的(便利な言葉)な「ケーキ」を前に、OGの皆さまの反応は。


「ふふ、懐かしいわ。私も昔、クリスマスでやったっけ……」

「ちょっと恥ずかしかったけど。今となっては、いい思い出よね……」


 しんみりしてた。


「いいのかその反応で! てか昔からこのお店、こんなことしてたの!?」


 由理、ツッコミ疲れて、くらくらしてきたのでひと休み。

 そんな彼女は置いといて、季紗がお姉さま達を誘惑……でなく、ケーキをすすめる。


「ほら、懐かしの味ですよ皆さま? どうぞ、私を、食べてください♪ きゃっ♪」


《注意・ここから先は、健全な少年少女には『ちょっぴり』刺激的な絵が繰り広げられます。なので、今回は音声のみでお楽しみください》


「ぺろ、ぺろ。ぴちゅっ、ちゅぷっ♪ あら、可愛い苺さん。とっても甘そうね、かぷっ♪」

「やぁっ♪ そこ、苺じゃなくて私の乳……んあぁぁ♪」

「ぬる、ぬぷぅ♪ ぺろっ、ずるぅ♪ ああ、お肌の温もりでクリームに適温になってて……すごく甘いわ。汗の塩気がいいアクセントね!」

「ん、はぅ……ふぁ、んくぁぅ♪ もっと……もっと季紗を、味わってくださいませ、お姉さまぁ♪」

「ぢゅぷっ、ぢゅぶぅ……。あら? お肌のクリームは乾いてきたのに……ここはなんだか、びしょ濡れよ?」

「あぁっ♪ んっ、あっ、あふぁぁっ♪ ふぅっ、だ、だめぇっ、だめ、お姉さま♪ そこ、舐められたら……。ふぅっ、んぐっ♪ 季紗の……が、溢れりゅぅ♪」


 ケーキを食べてるだけと言い張ってみる。


「恐ろしい店ね、『リトル・ガーデン』……」

「ば、ばか由理。あたし達も、クリスマスにはあれ、やるんだよ……?」


 えっちな気分になってきちゃった由理と美緒奈、もじもじ赤くなりながら手を繋ぐ。

 まだ清純さを残した彼女達の前で、季紗のひときわ甘美な声が……。


「う、くぅぅぅぅぅ♪ あぁぁぁぁっ……っ♪」


 ケーキを食べてるだけだから!

 皆でケーキを食べてるだけ!!


 ※ ※ ※


 そんなケーキを食べているだけのごくありふれた平凡な、全く問題の無い健全な光景をカウンターから見守りながら。

 今回のOG会の発起人であるお姉さん、裏沢うらさわ遥香はるか女史が、額に汗をひと筋。


「ふ、ふふ。みんな懐かしそうで、よきかな、よきかな♪」


 店主のとおるお姉さんが呆れた目を向けた。


「無理やりいい話にしようとしてない?」

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