夏祭り編① まもりたい、この日本文化

 夏も終わりに近づき、日差しもやわらいだ頃。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」のある町内では、夏の最後の思い出に、お祭りが開かれる。


浴衣ゆかたなんて久しぶりかも。去年はそれどころじゃなかったしなぁ……」


 涼やかな水色に可愛らしい金魚の柄が描かれた浴衣を着て、由理がくるりとポーズ。

 今日の「リトル・ガーデン」は、1日夜まで、浴衣で営業なのだ。


 ロッカーで一緒に着替えるのは季紗きさ

 サクランボの絵が入った浴衣は淡い桃色で、派手すぎることもなく、季紗のさらさらヘアーで清楚系お嬢様な容姿を、よく引き立てている。


「もうすっかり涼しくなってきたけど……まだまだ湿っぽいし。浴衣だとスースーしていいよね♪」


 それには由理も同意。浴衣の解放感に、なんだかウキウキだ。

 そんな由理へ季紗。


「ところで由理。まさかとは思うけど……パンツ穿いてないよね?」


 ……何を言ってるのだろうこの子は。


「穿いてるにきまってるでしょ。意味が分からないよ」

「浴衣なのに!?」


 驚く季紗に、由理、ああ、と納得。

 浴衣の時、女の子はノーパンノーブラという、有名な都市伝説があるのだ。


「それ昔の話でしょ? 今21世紀だよ」


 この現代社会に、浴衣でノーパンなんて古式ゆかしい女の子が実在するわけ……。

 そこで由理、はたと季紗を見つめる。


「……もしかして季紗?」

「ふふ……♪ 浴衣だとスースーするよね♪」


 頬を赤らめもじもじする季紗。

 スースーするの絶対浴衣のせいじゃない!


 微かに熱っぽい吐息を漏らしながら、由理へ潤んだ瞳向けて。


「……見たい?」

「いや別に。興味無いです」


 季紗、帯をゆっくり緩め始める。


「……見せてもいいよ。由理になら♪」

「人の話聞いてる? 見たいとか言ってないよね?」


 季紗、乙女らしく羞じらう表情をしながら、浴衣をはらり。

 白い肌を……。


「あ、あんまり見ないで。まだお昼だし、女の子同士でも、ちょっと恥ずかしい……」

「だったらやめなよ!? 見せたいの!? ねえ、見せたいの季紗!?」


 そして。

 するりと桃色の浴衣が床に落ち、露わになる季紗の裸身……。


「やっぱり裸ぁぁ! こ、このエロ乙女ぇぇぇぇぇ!?」

「違うよ由理! たしかに今日の私はノーパンノーブラだけど! そこにえっちな意図はありませんっ。私は大和撫子として、古き良き日本の浴衣文化を継承しまもりはぐくもうと決意しているだけであります!!」


 そしてそのまま、喫茶店のロッカールームにて。

 床へ由理を押し倒し、するっと浴衣を脱がせて肩を露出させた。


「すぐに裸になれて、浴衣ってホント効率的だよね♪ ……ちゅっ♪」

「ば、ばかぁ、まだっ、開店前……。むぷぅぅん♪」


 浴衣半脱ぎで(季紗は全裸)戯れる乙女達。日本の美しき風物詩。


「ちゅ……ちゅぷ。んんっ、ちゅぷぅ♪ ふぅ、やっぱり浴衣で百合キスしないと、夏は終われないよね。ちゅ……♪」


 由理の浴衣の裾へ指を入れながら、唇を貪る季紗。

 その舌遣いに合わせて鳴る風鈴が、由理の喘ぎ声をかき消……せなかった。


「んあぁ、ふぅぅ……っ♪ 季紗のばかぁ、こんなの、日本文化じゃないぃぃ……♪」

「私達が文化にするんだよ……!!」


 ……がんばれ若者。


 ※ ※ ※


 ちなみにまだ昼間。

 ロッカーで早くもえっちな声を上げる季紗と由理に、赤の浴衣の美緒奈みおなの感想。


「またエロいコトしてるし。ぐぬぬ……」


 拳をぷるぷるさせている。


 隣で、オレンジの浴衣から乳が零れそうなリズ。

 照れて真っ赤な顔を手で隠しながらも、指の間から濃厚百合キスに視線釘付け。


「なるほど浴衣で穿いてないのは、すぐに脱いで百合キスできるようになのね? エクセレントだわ日本文化!」


 こうして、日本の文化が海外に発信されていくのであります。

 古き良き和装の文化……ばんざい!

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