嵐の夜も百合

 台風接近の今夜は、百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」も臨時休業。

 住み込みの由理ゆーりとリズは、お風呂に入った後、早めに就寝することにした。


 夜の由理の部屋。外は雨戸を乱暴にノックする雨風の音。

 寝間着に着替え、ドライヤーで髪を乾かし合っていた二人。


 リズが、由理のベッドから腰を上げる。


「じゃあ、お休みのキスね。……ちゅっ♪」


 軽く口づけして、由理の頬を赤くさせる。

 リモコンで照明を暗くして、部屋を出ようとするが。

 寝間着の裾を、由理にぎゅっと掴まれた。


「由理ちゃん?」

「えと、ですね。今夜はそのぉ……」


 窓の外は激しい雷雨。


「ひ、一人で寝る気分じゃないっていうか、もっとキスしても、いいですよって……」


 暗い寝室を時おり白く染め上げる、稲光。


「べ、別にその、雷が怖いとかじゃなくてですね? リズさんも一緒のベッドで寝た方が、安心できるんじゃないかなーとか?」

「……雷、怖いの?」


 その時、ひときわ目映い稲妻が夜空を斬り裂く。

 窓をびりびり震わすほどの雷鳴。


「ぴぎゃぁ!?」


 由理は、リズの豊満な胸に抱き付いた。


「ち、ちち違いますよ? 高2にもなって雷怖いとか、そんなわけないですってばぁ!?」


 由理、泣いてます。どうやら雷が怖いらしい。……本人は否定してるけど。


「ふふ、恥ずかしがることないのに」


 怖がる由理ちゃん可愛い♪と、保護欲を掻き立てられてしまったリズ。

 お姉さま魂がむくむくと湧き上がってくる。


「じゃあ、今夜はずっと、キスしましょうか。それなら、嵐も怖くないでしょう?」

「だ、だから別にそのぉ……怖くなんて……」


 強がる由理の頬を愛しげに指先で撫でて。

 リズは、強引に唇を奪った。


「ちゅぶん……ずぷっ♪ ぐぷぅ……ふ、んうぅ……♪」

「だから、ホントに怖くなんかぁ……。でも、今夜は、キスしたいですぅ♪ ……ちゅむぅ♪」


 夜の寝室、ベッドの上で抱き合って、お互いの体温を感じながら。

 台風の雨音よりも激しく、百合キスの夜想曲を奏で合うのだった。


 365日、雨の日も風の日も百合キス!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る