プール開き編⑥ お嬢様の桃色な黒歴史(前編)

 東宮ひがしみや季紗きさ……中2の夏の、回想。

 海外で活動する音楽家の両親が屋敷にいないのは、高2の今と変わらず。

 広い屋敷で、少し年上だけど見た目ロリなメイド、上代かみしろふぶきと2人暮らし。


「ちょっぴり寂しいけど、私は平気だよ。だって……」


 思春期真っ盛り中学生の季紗、ふぶきの部屋のベッドの下から、素敵なモノを発掘。

 それは、えっちな百合アニメのDVD!


「私には、百合があるから。ふふ、これはパパママいたら、リビングじゃ見られないよね♪」


 いかにも良家の令嬢らしい白ワンピースで未成熟な肢体を包みながら、エロアニメをうっとり鑑賞お嬢様。カラダをくねくねさせてて、嬉しそうです。


 大画面の中では、薔薇咲く宮殿のベッドで、メイドさんがお姫様にキス。


『んくっ、ふぁっ……ちゅくぅ、んぷぅ……♪ ふふ、殿下……もっと、カラダの力を抜いて……♪』


 濡れた瞳で愛しげに舌を絡め合いながら、メイドは細い指を、姫君のドレスの下へ滑り込ませる。

 くちゅぅ、と濡れた音、


『ふぁぁっ♪ ば、ばかばかぁ、そんなトコロ、触るなぁ……♪』


 白い喉を仰け反らせ、切ない声を漏らすお姫様。

 その声を、甘い接吻くちづけふさいで。


『ちゅぷん……♪ あら、殿下の唇もここも、もっと欲しそうですけど♪』


 メイドは獲物をいじめる肉食獣の眼で、悪戯っぽく微笑んで。


『殿下がお嫌なら、キスまでにしておきましょうか。ふふっ♪』

『……ば、ばか』


 指での愛撫を止められて、苦しそうに姫君は。

 熱く火照った顔を、鼻先をメイドに近付けて哀願する。


『いじわる、しないでぇ。もっと、優しく……♪』


 肺の空気を吸い出す勢いで、深く深く百合キス。

 ちゅぷんっ、くちゅ、くちゅるぅ。

 水音が、淫らな愛の旋律が……唾液の粒が零れる口元からだけでなく、スカートの中からも……。


「私の百合アニメコレクション見ちゃダメです季紗お嬢様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


 テレビに繋がれた高級スピーカーから、盛大に漏れる喘ぎ声とベッドのギシギシ効果音に、ふぶきがリビングへ飛び込んできた!


「そ、それは! そのアニメは、お嬢様には早過ぎます! 18歳になるまではダメなのれすぅ!?」


 当時中学2年の季紗、もちろんえっちなアニメ見るの禁止!


「ふふ、そういうふぶきさんは、今何歳でしたでしょうか?」

「はい、16歳です。てへ♪」


 ……大人のアニメは18歳になってから!

 後ろのテレビでは、お姫さまとメイドが半脱ぎになって、妖美な唾液と舌の舞踏会を開催中。

 ピンク色な画面の色に照らされながら、季紗はぺろりと上唇を舌なめずりした。


「こんなの見ちゃってぇ、ふぶきさんたらイケないんだー♪ でも仕方ないよね、私だって興味あるもの♪」

「お、お嬢様? 目が、すっごく妖しいです」


 リビングの柔らかソファに、ふぶきを追い詰めて。

 ふぁさり、と、季紗の長い絹糸の髪が、ふぶきの白の髪と重なる。

 カラダごと上から覆い被さり、押し倒すような格好。


「い、いけませんです、お嬢様ぁ……♪」


 と言いつつ期待の眼差しで、細い肩を震わす百合メイドふぶきさん。

 季紗も息を荒げて、唇を近付け見つめ合う。


「ねえ、私試してみたいな。ホントに、アニメみたいに……女の子同士のキスで、ドキドキするのかを♪」


 ……ぷちゅ。


「ふぅ、んうっ……♪ にゅむ……。んぷ、ずぷぬぷ♪ れる、んん……♪」

「ふぁ、んぶぅ♪ ぐぷ、ふぅぅぅ……♪ んんっ♪」


 揺れるソファの前、テレビ画面の中では、愛し合う姫とメイドが、えちぃ吐息の協奏曲を紡ぎ出す。

 その甘い禁忌の音が、季紗達の唇の織り成す百合キスちゅぱちゅぱ音とシンクロするのだった。

 

『ふぷぅぅ……♪ んぷ、ちゅぅ。唇、甘くて……好きぃぃ……♪』


 ※ ※ ※


「うぅ、これだけ百合キスしても、まだまだ足りないよぉ……♪」


 通っている、共学の中学校にて。

 スクール水着姿の季紗、熱の治まらない唇を指で抑えながら、プールへ視線を。

 その先には、同じくスク水で水泳中の、女子達の姿。


「うわぁ、女の子の水着きゅんきゅんするよぅ……♪ やっぱり水泳部入って良かったぁ♪」


 とっても不純な煌めきを瞳から溢れさせる、可憐なお嬢様。

 季紗の発情は、鎮まる気配も無いのでした。そんな、3年前の夏。

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