プール開き編⑦ お嬢様の桃色な黒歴史(中編)

 14歳の女子中学生、東宮ひがしみや季紗きさ

 清楚なお嬢様は、水泳部に入りました。


「水泳! みずぎー! となると、やっぱりこういう展開だよね♪ ふふっ」


 季紗ちゃん妄想タイム、開始。


 プールあるあるイベント、その1。

 まずは更衣室で、制服を脱いで水着に着替える季紗。

 その背中から、部員の女の子が腕を回してくる。


『わぁ♪ 東宮さんって、意外と胸大きいのね。柔らかぁーい♪』

『あんっ、だ、だめだよぉ、そんなぁ♪ ドキドキしてきちゃう……♪』


 胸を揉まれてドキドキしてしまったので、百合キスしました。


『ちゅぅぅ……♪』


「きゃー絶対ある! このイベントは絶対あるよー♪ ど、どうしよう、ブラ可愛いの着けとかなくちゃ!?」


 プールあるあるイベント、その2。


 準備運動で女の子同士ふたり一組、屈伸などでお互いのカラダを触っているうちに……。


『東宮さんのカラダ触ってたら……だ、だめっ、私、興奮してきちゃった……!』

『うん……私もだよ。カラダが、熱いの。……ねえ、鎮めてほしいな♪』


 カラダが火照り過ぎたので、プールに入る前に百合キスして鎮めました。


「あるよね、あるある! 熱いカラダのままプール入ったら、温度差とか良くない気がするし。キスで鎮めなくちゃいけないよ……!」


 もっと火照ってしまいそうな気もする。


 そしてプールイベントその3。


『やぁん、泳いでたら水着が脱げちゃったー♪』


 悶々と皆の裸を想像する季紗お嬢様。


 その4。


『大変、東宮さんが溺れたわ、しっかりして!? こ、これはもう……人工呼吸、しないとね?』

『……ちゅぅ♪』


 その5。


『ちゅぅ……♪』


 その6、


『ちゅぅ……♪』

『ちゅぷぅ……♪ ちゅくぅ、ちゅぅぅ……♪』

『だめ、水着に胸がときめいて、百合キスしたくなっちゃう……。ちゅぅ……ふぅ♪』


 ……もはや状況シチュエーションが不明だが、とにかく季紗の頭の中では、スクール水着は媚薬と同じ。着たら百合キスしたくなる、魔法のアイテムらしい。


「だ、だって水着だよ!? 女の子の水着なんて見たら、皆キスしたくなるよね!? ああ……鼻血が止まらないぃ……♪」


 こうして、スクール水着に夢いっぱい妄想を詰め込んで、季紗は水泳部員としてがんばるのでした。


 しかし、現実は。


「……うぅ、えっちなイベントが起こらないよぉ」


 教室で、机に突っ伏す季紗。

 皆の水着姿をたっぷり見られるのは眼福だけど、それだけ。


 もっと色々な、というかエロエロなイベントの発生を期待していたのだが。

 意外にも多くの女子は、女子の肌を見ても百合キスしたくならないらしい。

 ムラムラもドキドキもしないみたい。


 季紗ショック!!


「……もしかして私って。ちょっと、おかしいのかな……?」


 当時由理がいたら、「今頃気付いたの?」とか「ちょっとじゃないよね」と辛辣しんらつなツッコミを入れていたところだが。

 中学2年生の季紗は、


(……ううん、私は普通だよ! えっちなコトに興味を持つのは自然ですっ)


 きっと皆、シャイなんだわ。

 そう自分に言い聞かせて。百合キス妄想にふけりつつ、部活動に精を出すのだった。


 そして、水着を見たいので部活動は絶対サボらない季紗。

 気が付いたら、水泳部のエースになっていた。


 部員たちの、憧れの視線。


「すごいね、東宮さん♪ カッコいいよ!」


 スクール水着の女の子達に抱き付かれたりしながら、


「ふぁ、む、胸が当たってる♪ こ、ここまで密着したら、キスするよね……♪」


 でも、やっぱりキスまで来てくれない。


「……? どうしたの、東宮さん。顔が、赤いよ?」

「うぅ、なぜキスしないの……!?」


 女の子同士が触れ合ったら、百合キスするものと思ってた季紗。

 暴発、寸前です。

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