下着を買いに来た! 少女たちの私服チェック

 ゴールデンウイークの大型連休中。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」が1日だけお休みになる日に、約束して4人は下着を買いに行くことに。

 お店に住み込みの由理ゆーりとリズは朝食をとって、朝のキスをした後、2人バスに揺られるのだった。

 車内の震動に胸を揺らせながら、リズが話し掛ける。


「バスは終点の駅前まででいいのよね? けっこう遠いけれど……」


 「リトル・ガーデン」は東京郊外、埼玉県との県境に近い町にある。

 そこからバスに乗って、都会へ。


「お店は季紗きさが選んだんですよね。街中とか、ちょっと高そう……」


 財布を開き、由理はちょっぴり渋い顔。予算は、多くない。

 やがてバスは終点へ。そこから今度は中央線で数駅、立川駅に到着した。

 JR立川駅。

 新宿などの都心に繋がる中央線のホームタウンで、未来的な大きな駅が特徴。

 魔術と科学が交差する学園都市のモデルになったり、聖人が住んでることで有名だ。


「あ、来た来た。2人とも、こっち、こっちー」


 北口を出ると、駅前のデッキで待っていた季紗が、可愛らしく手を振って呼ぶ。

 隣にはゲーム中の美緒奈みおな


「遅ーい。もうお昼になっちゃうじゃんよ」


 時刻は11時。小腹が空いてくるお時間。

 ともあれ4人揃うと……実に華やか。

 5月の連休、駅前はたくさんの人で溢れているが、その注目を浴びている。


「まあ、美緒奈は目立つよね。秋葉原でも見たけど、そのゴスロリ」

「なに由理、見惚れた? まっ、美緒奈様は天使だから、なにを着たって目立つけどな♪」


 八重歯を覗かせ照れ照れ、スカートの裾をつまむ美緒奈。

 赤い髪のツインテールはいつも通りで、私服はゴスロリドレス。吸血姫コスプレ衣装のような、漆黒の生地に白のフリルが映える、ひらひらドレスだ。

 大都会立川でも、さすがに目立つことこの上無い。


「でもさ、季紗ねえも似合ってるよね。もう、なんつーの? マジお嬢様って感じ」

「ふふ、ありがとう美緒奈ちゃん」


 羨望せんぼうの眼差しに悪い気はしないのか、頬を緩ませる季紗。

 亜麻色のさらさらロングヘアーの頭に、今日はリボンが可愛い小さな帽子をちょこんと乗せて。

 春らしい爽やかな白のワンピースが、とってもお嬢様。

 ノースリーブの肩に掛けたオレンジ色のケープも、おしとやかで清楚な印象を増幅させている。

 髪をさらっとかき上げれば、光の粒子が零れ、天使の羽根が舞う……きらきらガール。

 街の視線は、もう釘付け。

 お嬢様ルックがうらやましい由理、


「いいなぁ季紗は、そういう女の子らしいの似合って。私も、髪伸ばそうかな……」

「あら、由理だっておしゃれよ。男の子みたいだけど、すっごく似合ってる。私、デートしたくなるもの♪」


 由理の今日の私服は、ボーイッシュなパンツルック。清潔感のあるブルーの上着に、健康的な太腿がまぶしい。

 セミロングの髪を飾りでまとめ、いつもよりスポーティな魅力だ。

 褒められて、はにかむ由理。

 頬を掻きながら赤くなる。


「そう? 季紗とか美緒奈に言われると、なんか照れるね」


 休日の立川駅前。

 おしゃれな3人の乙女が笑い合う姿は、可憐な花園のよう。

 駅前の皆さんにとっても、良い眼の保養です。


「……あれ? 私は?」


 リズの言葉に、3人は目を逸らした。


「び、微妙……」

「……うん、微妙だよね、あれ」

「由理、バスと電車で一緒だったんだろ? 勇気あるな……」


 とりあえず褒められてはないことに気付いて、リズ涙目。


「だ、だって仕方ないじゃない! サイズが、サイズ合うのが無いんだもん……!」


 そんな彼女の私服は、可愛くないネコの顔が描かれたスウェットに、ご年配のおば様的な配色のチェックのスカート。

 18歳、花も羞じらう金髪美少女の服としては、とても、微妙だ。

 でも、仕方ない。

 なぜならリズの言う通り、サイズが無いのだから。

 服の胸部分、伸びに伸びたネコの顔が物語っている。


「その、胸が……。普通の服じゃきつくて」


 乳を隠して、もじもじするリズ。人間の腕ではとうてい隠し切れないその巨乳は……ああ、圧倒的な存在感だ。

 立川駅前を通行する男性たちの視線を、惹きつけずにはいない。ゴスロリにお嬢様にボーイッシュが揃っても、なお太刀打ちできないほどに……。

 代表して、美緒奈が泣いた。


「乳か! やっぱり皆乳なのかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?」

「だいじょうぶ! つるぺたに萌える人もいるから♪」


 季紗、ぐっと親指立てました。







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