ももいろお風呂祭り その2 東宮季紗

 東宮ひがしみや季紗きさは、Sランク美少女だ。

 茶色掛かった髪の毛はすべすべのさらっさら、最上級シルクの手触り。

 光を浴びれば、童話のお姫様みたいな亜麻色にきらめく、ロングヘアー。

 大きな瞳をふち取る睫毛まつげも、星流れる天の川のように、燐光を纏って見える。

 それ以上に印象的なのが、深い深い瞳の色。澄み渡った冬の夜空を閉じ込めた、清冽な闇色の瞳。

 吸い込まれそうな、むしろ吸い込まれたくなる、深遠で思慮深げな瞳。

 幼稚園時代から小中高と、学芸会の劇などでヒロインに指名されなかったことは無い、美少女オブ美少女……それが東宮季紗。17歳の高校2年生。 

 清純で、はかなく高貴な、星の姫君。

 現代日本に産まれ墜ちた、天上のアルテミス。

 由理ゆーりと同じ秋芳しゅうほう学園で生徒会副会長にクラス委員も務める、とっても真面目な女の子。

 そんなパーフェクト美少女、季紗は今、大きな屋敷のお風呂で……。


「るんるんるーん♪ 乙女を綺麗に磨きましょう♪」


 全裸でカラダを洗っていた。

 実は由理よりちょっとだけ身長は上の、モデル体型。

 腰も脚も細いが、胸はかなり豊かな、着痩せするタイプ。

 その麗しさは、余分な装飾を取り払ったオールヌードでこそ、ひときわ発揮される。

 季紗の裸は……芸術なのだ。

 さて、そんな芸術的美少女、お風呂の中、裸で。


「ふふ、今日も皆の唇を頂いちゃった♪」


 じゅるっとヨダレ垂らしてる。……残念。


「はぁはぁ……はぁはぁ……やっぱり百合キス最高♪ 女の子に産まれて良かったぁ……」


 今日も今日とてたっぷりねっぷりキスした唇を、ぺろっと舐めて息を荒げる……残念美少女ッ!

 頭の中が常春とこはるのおピンク空間だ!


「由理にリズさんに美緒奈みおなちゃんに……皆もう可愛すぎっ。キスが美味しすぎて私おかしくなっちゃうよぅ♪」


 百合色魔境「リトル・ガーデン」に誰より順応してるのは、間違いなく彼女。

 今日も、由理に怒られるまでキス。

 あんまりキスし過ぎて、「ば、ばかっ。この変態!」と罵られ興奮したのは内緒。

 リズには、息が止まって窒息しそうなくらい、深く深くフレンチキス……つまりベロチュゥ。

 弾力抜群のふかふか巨乳を揉みながらである。

 敏感に顔を赤らめながら、もっともっと口づけをねだるリズを、たっぷり甘えさせてあげた。

 美緒奈には年上として、十数年研鑽した百合キスの技術を伝授! 

 別に頼まれてないけど。

 小学生みたいなロリータメイドの美緒奈を抱き締めて、お尻さわさわして百合キス……犯罪みたい!

 ぷにぷにの唇を堪能した。


「ああ、でもまだ足りないよぅ……。もっと、もぉっと百合キスしたい……♪」


 裸のカラダをくねくねさせて、妄想にふける季紗。

 東宮屋敷のクラシックな浴室は、おピンクな妄想世界に侵食されそうだ。


「よーしっ、もっと皆とイチャイチャするためにも……」


 季紗は気合の入った真面目な顔で……真面目な顔をすると恐ろしく美少女だから困る……決意を語る。


「自分磨き、がんばろー! おー!!」


 手始めに太ももの裏から、石鹸を塗り塗り。

 わきに、白い胸に、柔らかい脇腹に。

 丁寧に、丹念に、竪琴たてごとを奏でるマーメイドの指で、全裸の肢体へ泡を擦りこんでいく。

 天使の美貌が、さらに輝く。

 思わず胸いっぱいに吸い込みたくなるレベルの美少女成分が、シャワールームの空気を充たす。

 季紗は自分でも、それなりに悪くない容姿とは思っているが……それでも大変過小な自己評価だが……美貌を磨くことをおこたりはしない。

 お洒落にも気を遣って、お肌に良い石鹸、髪の艶々つやつやを保つトリートメントを厳選して。

 全ては……その努力の全ては……!!


「くんかくんかしたり、すりすりしても、嫌がられないようにしなくちゃ……!」


 女の子同士でイチャつくためなのである!

 キスしたい、えっちなコトしたいという季紗の欲望が、執念こそが……彼女のスペシャルな美貌のもと

 「百合は、女の子を数百倍、数億倍にも可愛くする」という高名な理論の実証モデルケースが季紗なのだ!!


「ふふっ、皆がキスしたくなるくらい、綺麗になれたらいいな♪」


 ぬるぬる……泡々……。

 湯気でピンクに色づいた裸体に、石鹸をくまなく塗っていく季紗。


「んんっ……♪ 由理ぃ、リズさん、美緒奈ちゃん……4人で、ぬるぬるしたいの。もちろんお風呂で、裸で……♪」


 ぴちゃん、ぴちゃんっ。

 何だか、水滴とは違う水音がしてきたような?

 お子様には見せられない妄想空間は、浴室いっぱいに増殖するのだった。

 ……この乙女、エロ過ぎる。


 ※ ※ ※


 その時、ドア1枚隔へだてた脱衣所では。


「んぁっ♪ んっ……。くぅっ……♪」


 お風呂から漏れる声に、クールビューティロリメイドふぶきが、鼻血を出して倒れていた。


「ふにゃぁぁ……♪ えっちなお嬢様も、ふぶきは大好きです♪」


 東宮季紗……天使の美貌にエロエロ思春期男子のような魂を宿した、お嬢様。

 とっても変態さんだけど、それでも可愛いと、ふぶきは思うらしいです。


「皆さんは、どうですか? 私は、『季紗お嬢様サイコー!!』ですが」


 誰にかは分からないが、同意を求めるのだった。

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