美緒奈さまのターン!
百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」開店前の朝礼。
白のフリルが映える黒のメイド服は、ロングスカートで上品なクラシックスタイル。
カチューシャ型のヘッドドレスを頭に付けて、メイド店員達は……まだまだ、キスしていた。
「み、
頬を染め、赤毛ツインテールの髪先を指で弄りながら、ロリメイド美緒奈は
「あのさ美緒奈、別に嫌ならいいからね? 私はノ・ン・ケですので」
「リトル・ガーデン」唯一の(自称)ノンケ、由理。
今日は学校で
しかもこの後、お店で接客という名の百合キスをするわけで。
「それにもう開店するし。いい加減、皆のキスを止めないとね……」
店内を見回せば、季紗とリズ、そして非常勤アルバイトの宮野早乙女コンビと、皆放っておけば永遠にキスしてそうに、熱く唇を求め合っている。
「ちゅぅ……んっ。ずぷ、ちゅく……んぷぅ♪」
おーい、開店ですよーと皆の正気を取り戻させようとする由理。
そのエプロンの
「い、いいからっ。あたしと……キスしろってば」
あんたねぇ、と言い掛けて、由理はぎょっとする。
美緒奈、顔が真っ赤。ハートが溶鉱炉になったみたいな頬の熱気が、空気を通しても伝わってくる。
「ど、どうしたの? ……んむぅっ!?」
熱でもあるのか、心配して聞こうと発しかけた言葉は。
背伸びしての百合キスに塞がれた。
「んっ……」
由理の両手を握って、小さなカラダを微かに震わせながら。
美緒奈は、普段は強気なツリ目に涙を浮かべて、唇を押し当ててくる。
ゼロ距離になった顔と顔、頬に集まり伝導する血の熱さと、唇からでも感じられる激しい鼓動。
「んぷっ……くぅっ……」
「くむぅ……んふぅ……」
激しく求め合う
雛鳥が親に擦り寄るような、そんなくちづけ。
「ぷはっ……。な、なんなの美緒奈、なんか、いつもと違う……」
唇と舌の間、魅惑の糸を引きながら。
由理も、なぜかときめいてきた。
……美緒奈って、こんなに可愛かったけ、と。
口は悪いし小憎らしい美緒奈が、最近なんだか……恋する乙女みたい。
「う、うるさいうるさいうるさぁいっ! あたしだって、分かんないのっ! キス……したいのっ」
ツインテールを荒ぶらせて、美緒奈は由理へ抱き付いて、背中に腕を回して。
今度はもっと激しく、由理の吐息を欲しがるのだった。
「んむ、ぶちゅ、ぐぷぅっ……! な、なんであたしっ……こんなドキドキしてるのさぁ!?」
「ちょ、ん、くぷっ♪ な、なになに、なんなの!? み、美緒奈ぁっ……舌、挿れすぎぃ……!?」
初夜の花嫁のように、由理に自分の全てを捧げる勢いで、猛烈に舌を絡めてくる美緒奈。
理性の女神様、ごめんなさい。
2人の唇は、愛と唾液を無限循環サイクルさせる、LOVEの歯車迷宮。
ぴちゃ、ぴちゃ、では済まない……洪水みたいに溢れ出る接吻のちゅぱちゅぱ音は、キスに夢中だった他の百合メイド達さえ我に返って、思わず注目しちゃうほど。
濃厚熟成、禁断の果実の果汁200%な百合キスを見て、季紗は「眼福♪」と頬を染めながら、
「うわ、す、すごいっ。由理も美緒奈ちゃんも……恋人さんみたい♪」
自分もあんなキスしたい♪と息を荒げる季紗に対し、彼女よりは
こんな過激なキス、恥ずかしくて見られないと顔を掌で隠した。
……指の間からばっちり見てるけど。
「み、美緒奈ちゃん、最近変よね。2人で秋葉原に行った頃から」
そうこうしている間に開店時間が過ぎていた。
メイド店員達、慌ただしく、
「お帰りなさいませ、お嬢様♪」
お客様達を迎えるけれど。
「あふぅ、んんっ♪ ら、らめぇっ……美緒奈ぁっ! お客さん達、来てるぅ……! んびゅ、ふにゃぁぁぁ……♪」
「んく、ふぅ……由理、ゆーりぃ……♪ あたし、壊れたみたぁい……。ちゅぅ、ちゅぷぅぅ……♪」
息を切らし、ミルクをねだる子犬の顔で美緒奈、由理を離すまいと抱き締めて懇願。
「もっと、もっとキスしてぇ……っ。んーんっ、むふぅぅ……♪」
ここ、お店の中である。
他の店員も、お客の女の子達も、もう声を掛けることさえ忘れて、赤面しながら、由理と美緒奈、2人の愛の暴走列車超特急が理性のレールを外れ脱線どころか空にまで駆けていくのを、見守るしかなかった。
……そして。もはや忘れられ掛けていた、見学中のクールビューティ……
季紗に仕える本物のメイドさん。
「美緒奈さん、でしたか。あの方、もしかして……」
激しい百合キスに頬を染めながら、
(由理さんに、恋してる?)
由理と季紗を引き離すために、使えるかも。
そんなことを思うのだった。
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