出会い編 終 百合メイド喫茶へようこそ♪(後)

 白とピンクを基調にしたお洒落な店内。

 パチパチと巻き起こる拍手、常連乙女達のスタンディングオベーションが、新たな百合メイド店員誕生を祝福する。

 でも、拍手だけで終わるはずがないのが「リトル・ガーデン」。

 伝統ある歓迎の儀式……百合キス、承認。


「い、いいんちょ、んむぅ、いきな、り……む、ちゅぅ!?」

「はぁ、んく、ふぅ……」


 衆人環視で早速百合キス。

 まずは季紗きさが、激しく由理ゆーりの唇を奪う。

 清楚な外見の季紗が、欲情ダム決壊みたいに瞳をとろんと潤ませ、えっちな水音立てて百合唾液を吸い上げる艶姿、かなりやらしい。

 否、神々しい。


「ふぅっ、くぅ……、むぅ……。西城さいじょうさん、あのね……」


 じゅぷん、にゅぷん。柔らかな由理の口腔内に、熱い舌を出し入れ。

 熱烈なオトナのキス。


「私、キス大好きだけど……。んっ、ちゅむぅ♪ え、えっちな子だと思わないでね?」


 いや無理。心の中で由理即答。


(い、いきなりこんなの……ハードル高すぎだよ!?)


 歓迎会でこれとか、恐るべし「リトル・ガーデン」。

 いや、委員長……季紗が特別なのか。

 ものすごく積極的な、マウストゥマウス特濃凝縮百合接吻ベーゼ

 初心者には厳しい?


(で、でも……。ん、っ……!)


 唇を押し付け舌を嬲る、魂まで吸おうとするような強烈な百合キスを贈る季紗の、清純お嬢様なサラサラロングヘアーが、由理の頬を撫でる。

 押し当てられる意外と大きい胸の感触と、柔らかなカラダから立ち昇る甘い匂い。

 桃のような、季紗の匂い。

 つい、くんかくんかすると、


(委員長……いい匂い)


 由理は、身を委ねてもいい気がしてきた。

 限界突破に甘々な糖分過剰の百合フレンチキスに、由理も問答無用で、魂が喜びに震えるのでした。


「ふぁ、ふにゃあぁ……♪」

「ずりゅ、ずちゅぅ……♪ 西城さん、これから毎日キスしようね♪」


 清楚系メイド、東宮ひがしみや季紗。キスは、ちっとも清楚じゃない。


 ※ ※ ※


「えへへ、次は美緒奈みおなの番だよ、お姉さま♪」


 キラッ☆と擬音が聞こえそうなアイドル笑顔で、ウインクする赤毛ツインテールのロリメイド、美緒奈。


「あんた、いきなり何をネコ被って……むぅぅぅぅっ!?」


 由理は、唇を塞がれた。もちろん、美緒奈のキスで。

 指を絡ませ合い、つま先立ちで背伸びして。姉に甘える妹のような、可愛らしい百合キス。


「ちゅ、んっ。お姉さまったら、何を言ってるの? 美緒奈わかんなぁい♪」


 猫撫で声とはこのことか。

 人格豹変レベルで……小学生な容姿にはある意味似合っているが……ハイトーンロリロリちっくのアニメ声で甘えながら、キスしてくる美緒奈。


(何この子、さっきまで口悪かったじゃん!)


 そんな彼女に由理は戸惑うが、周りで見守る客達はきゃーきゃー黄色い声を出して、


「はぁ、やっぱり美緒奈ちゃん可愛い♪ 妹に欲しい♪」

「キスがちょっとたどたどしいのも良いよね♪ かーわいーい♪」


 そんな歓声に一瞬、美緒奈は眼をキュピーンと光らせ黒い笑み。


(……なるほど、そういうキャラ作りなのね)


 由理は、呆れつつ納得した。

 そんな美緒奈との百合キスは、季紗のような肉食ケダモノなそれとは違って。

 唇を唇でなぞる、吐息をそっと混じらせ合う、控えめなキス。

 舌を挿れるのは先っぽまで。

 「あたしのキステク、見せてやんよ♪」とか言ってたわりには、季紗ほど上手くないのだけど。

 それはそれで、可愛らしいかも。苺色の唇の求めに羞じらいながら、由理は、


(まぁ、これくらいのキスなら……いいけどさ)


 すでにノンケじゃない感想を抱き始めていた。


「ちゅっ……、ふにゅ♪ お姉さま、美緒奈と仲良くしてね♪」


 ネコ被りロリメイド、南原美緒奈。キスは、まだまだ勉強中です。


 ※ ※ ※


 そして。

 そしてとどめの時間が来た。


「西城さん、ううん、由理ちゃん。私も……いいかな?」

「う……、は、はい」


 青い瞳に見つめられ、由理もつい声が上擦ったり。

 最後は、百合の黒船。青い眼の金髪巨乳メイド、リズ。

 ちょっぴり頬を染め、純粋ピュアな視線で見つめつつ、キスをねだるその顔……まさに聖少女。

 日本規格外な胸のサイズに似合わない、恋に恋する乙女全開の愛らしい笑顔で、そっと唇を近付け、瞳を閉じて。


「……ちゅぅ♪」


 金髪天使との百合キスは、清楚で優美さに満ちて……。


(あ、嫌いじゃないかも……)


 母の温もりのように優しい百合キスに、由理は心が解きほぐされて。

 なんて思ってた時期もありました。

 ずにゅぅ、リズの舌、由理の口内へ進軍開始。


「ちゅぷ、にゅぅぅぅっ!? や、やっぱり舌、挿れ……っ!?」

「ぴちゅ、くちゅ。ずぷぅ♪ ふふ、由理ちゃんの味、甘くて美味しいわ♪」


 段々、段々激しくなる百合キス。

 寂しがりやなウサギさんのように、最初はおずおずと……でも一線越えるともう止まらない、熱烈に求め合う、舌を絡ませ合う、そんな接吻くちづけ


「ふぅっ、んん、むちゅぅ……♪」


 幸せそうな顔で何度も何度も、濃厚に唇を求めてくる、唾液の銀糸を絡ませ合うリズ。

 そのレモン味のキスに、由理は。


(……甘えちゃって。可愛い、かも)


 なんだか、孤独だった自分と近しいものを感じて。

 こちらからも舌を挿入してみたりするのだった。


「ちゅぅ、ちゅぷぅ♪ 由理ちゃん、これからは一緒ね♪」


 寂しんぼう金髪メイド、リズ=ノースフィールド。キスはスロースターターです。


 ※ ※ ※


 そして日は暮れていく。

 3人の百合メイド店員に、非常勤アルバイトの百合メイド数人、それから常連客の乙女達。

 由理はたくさんの乙女と連続で……キス、キス、キス。もう夢中なの(@桜Tri〇kオープニング)。


「あ、にゃぁぁ……ん♪ これじゃ、身が持たないぃぃ……♪」


 みんな、キス上手過ぎである。

 幸せ満開でもはや足腰立たない由理、蕩けた顔で、唇から下、胸元まで唾液でべとべとにしながら、


「わたひ……ふーぞく店員になっちゃったぁ……♪」


 えっちな表情でうっとりする由理へ、リズが赤面しながらコホンと咳払い。


「ふーぞくじゃありません。乙女の聖域ですっ!」


《出会い編、終わり》 

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