ヒキガネ

@hyouri0001

第1話

目が覚めるとそこにはクラスメイトの顔があった。

「お前大丈夫か?」

クラスでも体の大きい武田が俺に声をかけ、そのまま俺の体を起こした。

「ありがとう、俺は教室にいたはずなのにいつの間に」

「俺にもわからんがみんなは担任の若林に呼ばれて体育館に来たんだ、そしたらお前が倒れていた」

「思い出せない…」

記憶が曖昧で何も思い出せなかった。

ドンッ!と音がして横をみると扉を叩く男がいた。

「ここから出せよコラ!いい加減にしろクソ!」

金髪も相まって、いかにも借金の取り立てのようだ。

みんなここに閉じ込められた様子だった。

5人くらいのクラスメイトが固まってステージの上にいた。

よく見ると俺をいじめているメルもいた。

「最悪だ…」

心の声が漏れたその時体育館のスピーカーから若林の声がした。

「よし!集まったようだな!成績の悪いお前らに特別授業だ!いいか、2度も言わんからよく聞け!今から1時間以内に体育館の真ん中にある机の問題を解いたらここから出してやる。だが間違えたらそいつは先生が殺す!」

「何言ってんだ…?」

「だが特別に誰かを殺したら正解としてここから出してやる。机の中にあるものを使え。わかったら始めろ!」

俺は理解が出来なかった。唐突に始まったデスゲームのような雰囲気に圧倒され動くことも出来なかった。

そんな中1人の女子の声がした。

「ここに銃がある!」

体育館のステージの上や扉の近くにいた数人が真ん中に集まった。

「これは本物のか?」

さっきまで扉にいた金髪の石原が銃を手に取り窓に向ける。

そして引き金を引いた。

パァン!と大きい音が体育館に響く。音の反響で耳が痛い。窓ガラスが割れて破片が飛び散った。

「おいおい嘘だろ?」

「私嫌だ…死にたくない。死にたくない!」

1人の女子が死にたくないと言いながら穴の空いた窓に走る。

それにつられて数人が走り出した。

すると窓の外に人影があった。それは若林だった。

「逃げ出したやつが社会で生き残れるか!お前らは一からやり直しだ!」

若林は持っていたハンドガンを1人の頭に向け引き金を引いた。

パァン!

「キャァー!」

さっきまで死にたくないと呟いていた鈴木が叫んだ。

鈴木は腰を抜かしその場に座りこんだ。

「助けて!誰か!なんで助けないの!死にたくない!」

必死の声は誰にも届かず叫び続けた。だが窓から入って来た若林に打たれた。

パァン!パァン!パァン!

銃声が響く度に耳が痛くそして血が飛び散った。

外に出ようとした4人が頭や体を打たれその場に倒れた。

血溜まりが池のように広がりその場を赤く染めた。

俺は硬直していた体を必死に動かして側にいた武田と一緒に遠くへ離れた。一瞬の出来事で理解する間もなく簡単にみんな死んでいった。

「あと50分しかないぞ!早く解け!」

若林は顔色を変えず窓の外に出ていった。

何もすることが出来ず誰1人として動かない。

どこからか女子の泣き声が聞こえた。

「ママ…助けてママ…」

ステージの上でメルが泣いていた。

それをきっかけに皆が動き出した。

「誰か殺せばいいんだろ!おいてめぇら誰か俺に殺されろ!」

銃を手に持った石原が叫ぶ。

すると体育館の2階から笑い声がした。

「アハハハ!そんなことしたらここを出ても犯罪者として捕まるだけだよ!もっと頭使いなよ」

「てめぇ降りてこい。お前殺して外に出てやるよ」

鋭い目付きの石原の視線の先にいたのは笑っていた高橋だった。

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