クリスマスに咲く微笑み ~少年ニックの小さな冒険の大きな奇蹟~
My
第1話 イブ、朝
――昔々、知らない国の知らない街の名も無い物語。
知らない街の少しはずれた村の更にはずれた森林を抜けた先に一軒の家がありました。
「おはよー」
寝ぼけ眼で階段をノソノソと、少年は起きてきました。
「あら、ニック。おはよう……今日は眠そうね」
少年は、ニックと言います。
ニックは、木製の椅子に座り布のナプキンの上にスプーンを用意します。
「はいよ、朝ごはん」
ニックのお母さんは、スープの入ったお皿をニックの前に置き続いて、パンをニックに渡しました。
「いただきます」
ニックが朝食を摂りはじめると、ニックのお母さんも椅子に座りパンを食べ始めました。
「お父さんは?」
そう言えばと言わんばかりにニックは、家族が揃っていない朝食が気になりました。
「ニックがお寝坊さんなだけ。お父さんは仕事に行ったし、エミーは讃美歌の練習しに街の教会へ行ったわよ」
「そう」
ニックは、学校も今日はイブと言うこともあり休みで暇です。
「あ、そうだ。そうそう」
ニックのお母さんは、突然なにかを思い出したようです。
「今日、家のポストに入ってたんだけどこれ、ニックへ手紙が来てるわよ」
ニックは、お母さんから手紙を渡されて手紙を開きました。
「招待状? 讃美歌……教会……夕方から」
手紙には、
『ニックへ
メリークリスマス!
ニックは、歌が上手なのに何で聖歌隊で歌おうとはしなかったの?
学校の聖歌隊なんだから、本格的じゃないしニックも入ったらよかったのに。
まあ、そんなことを言っても仕方ない。
今日、讃美歌を歌うのよ。この日のためにたくさん練習してきた!
だから、ニックに聞いていて欲しい。
それに、今日はニックの妹と二人で歌うとこもあるの!
尚更、聞いて欲しいわ。
今日の夕方、レンガの街の教会で歌うからよろしくね。
ケイティーより』
と書かれていました。
「女の子の間だとちょっと流行ってるみたいよ。ふふ」
ニックのお母さんの言うとおり、これは女の子の間では流行っているのです。
好きな子の家に自分が頑張っているとこを招待状として、ポストに入れて招く。
そんなことは、ニックはちっとも知りませんでした。
「聖歌隊に入らなかった理由か」
ニックは心のなかで考えました。
そして、時計の秒針が一回りもしないうちに思い出しました。
「去年、歌ったからだ」
「そうね、去年はニックが独唱したのよね」
スープよりパンの方を食べ終わったあと、ふとニックは思いました。
「そう言えば、今日は暇だしなんか手伝うよ」
ニックが言うとお母さんは考えました。
「なら、蝋燭がなくなりかけてるからそれのお買い物を頼めるかしら? あと、マッチも湿気にやられてたからそれも買いに行ってちょうだい」
「うん」
ニックは、マッチと蝋燭のおつかいをすることになりました。
ニックは食事を済ませて、歯を磨き着替えて、コートを羽織りました。
「じゃあ、行ってきます」
「そうそうニックは、変な気を使ってクリスマスのケーキとか買ってきそうだから言っとくね。ケーキはお父さんが買ってくるから買わなくていいわ」
お母さんの言うことにニックは、頷くと扉を開けて外に出ました。
ニックの家は、人里を離れたとこにありました。
森林『荊の道』を抜けた先に、秋くらいまではカボチャが栽培されていて、ハロウィーンには賑やかだった畑が今では、霜が降り淡い白色の何もない畑が広がっている、もの静かな農村です。
きっと来年も豊作に備えるため今は休んで、今日と明日という日を楽しんでいるのでしょう。
そんな農村を抜けた先に、ニックの目的地の街『レンガの街』があります。
きっと今も、今日と明日という日から来週に迫るニューイヤーまで休む暇もなく、賑わっているのでしょう。
街に向かう途中、ニックは何人か同じ学校の友達と出会いました。
ニックは、クリスマス・イブということもあり雰囲気を盛り上げるために夢や欲しいものを聞きました。
ある男の子は、
「サッカー選手になりたいから、サッカーボールが欲しい」
と言いました。
ある女の子は、
「これからの冬を楽しみたいから、そうね……スケートブーツが欲しいわ」
と言いました。
もう一人、ある男の子は、
「なんでも知ってる人になりたいから、なんでも知りたい。だから、本が欲しい」
と言いました。
そうやって、ニックは友達に出会う度に夢と欲しいものを聞いていると、時間は長針と短針が重なりあう時間になってました。
ケイティーとエミーの讃美歌までもうすぐです。
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