獏の小箱(ライセンスシリーズ1)

捨 十郎

プロローグ

前口上

 運命の出会いというものがある。

 私だけの王子様が、白馬にまたがって迎えに来るというのもまた良い。私だって女の子なので、そういったものに対するある種の憧れはある。けれど、話はもう少し現実的だ。そう、「将来の夢は? 就きたい職業は? ビジョンは?」という、考えるだけで憂鬱になる話である。

 誰もが大人になる以上、みんなが大なり小なり将来を、どこかのタイミングで決めている。その判断を下す決め手と言えばいいのだろうか、とにかくその理由を、運命と呼ぶのではないか。

 サッカー選手のスーパープレイを見て同じくサッカー選手を志したり、手術で九死に一生を得た経験から医師を志したり。逆にそんな大それた理由がなくてもいい。食べるのが好きだったからパン屋になったっていいのだ。きっかけなんてささいな物で構わない。きっかけによって成したものが、あるいは成そうと思うこと自体が尊いのだ。

 私の場合、運命とは夢のことだった。みんなが夜、グースカ寝てる間に見るあの夢である。ある夢との出会いが、私の運命との出会いのきっかけだった。十五にして学を志すとは言うが、まさかその通りになるとは思いもよらなかった。

 私の名前は三桜弥生(みさくら やよい)。これは私の人生を決定付けた、運命の出会いの物語だ。

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