第2話

強矢家に戻り、再び年寄りの入れ歯が抜けたような車庫と向き合う。まだ初日のため、早仕舞いを察したのか、強矢さんは夕食用に使う豚味噌を手際よくタッパーに3枚も重ねてくれた。耳にかけていた鉛筆を外し畏まっていると、玄関の方から「ただいまあ」と言う大声が飛んできた。「うるさくて済みません。うちの次女がいま帰ったみたいで」。強矢さんは、その口調とは裏腹に顔が綻んでいた。だが、母の前に現れた次女を目にした瞬間、前田は思わず漏らす。「あっ凶の女子、さん」。

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