第43話土人形

 ゾンビとの戦いにより、疲弊した体を休めるためフローラと交互に休息をとる。

 超再生によって再生した足は何の不自由もないのだが、再生するのに使われた体力は戦闘によって使われる体力とは別で身体の芯に疲れが溜まる感じがする。

 戦闘の疲れならば少し休憩するば解消されるのだが、再生によって失われた体力は何か食べると解消される類いの疲れだった。


「フローラ………先に休め」


「分かった」


 このやり取りも慣れたものだ、最初の頃となるとお互いに先に休むのを譲り合い変な空気になってしまうこともしばしばあった。


 ゾンビとの戦闘で分かったのだが、今までの戦いでは自分のやりたいようにやれたから決着を早められていた。

 だが、逆に相手がやりたいようにやられてしまえばこちらの対応が著しく落ちる。

 簡単に言えば、自分の攻撃が防がれた時は何もできなくなってしまう、ということだ。


 もっと別の力をつけないとダメなのだろうか? ステイタス、能力的には勝っていたはずだ、オレには応用力が足りない。

 応用力のある魔法といえば、やはり大地魔法だろうか。

 今まで、魔法が勝手に形を作り出し完成する。

 だが今回は魔法名を言わず、魔法を使うイメージで地面の土を操っていく。

 操られた土はフラフラと浮き上がり人形を成していく。


「よし、上手くいった」


 だが、普通に魔法を使うより大量のMPが消費されてしまった、大きさは30センチ位の人形が出来るのだが、消費したMPはアースランスの2回分程使った。


「ん? 思ったよりMPを使ったな」


 だが、アースランス2回分くらいならば一時間程あれば勝手に回復する。

 ひどく不恰好な人形の土をゆっくりと両手でキャッチする、だがオレの両手に乗ると砂の山へと変わってしまう。


「うお! ………次は固めないとな」


 それから土人形を試行錯誤すること5時間程………なんとかそれらしいものが完成する。

 大きさはオレと同じくらいに仕上げ、様々な武装を施した、例えば背中にはオレ特製のアースソードが2本装備させ片手には小さめの盾。

 背中のアースソードは片方は白銀の両刃剣、もう片方は漆黒の両手剣。

 服装はいたって普通なのだが、聖なるオーラを放つ白銀剣と禍々しいオーラを放つ漆黒の両手剣………武装だけならオレを越えてるじゃん………。

 思いの外、凝った作りにしてしまった、最初はここまで凝るつもりは無かったのだがやりだしたら止まらなくなってしまった。そのせいでオレのMPはほとんど使ってしまった。


「う~ん! 我ながらすげぇ………あっ、でもこれ、どうしよう」


 夜叉みたいな姿で直立している土人形、正直、自分が作ったとは思えない程の出来なのだが、使い道が全くない。

 こんなものにMPを無駄遣いしてしまった………いや素晴らしい出来映えだしマジックバックの中に閉まっておこう。

 オレはマジックバックに土人形をしまおうとするが容量オーバーで入らなかった。


「あれ? 入らないのか………しょうがない、フローラが起きたら自慢しよう」


 そのあと二時間は聴覚鋭敏化を使い周囲に魔物がいないか、警戒していたが魔物は現れず退屈した。


「もうそろそろ起こすか……フローラ、起きろ」


「んっん~、やっぱこんなとこで寝ると体いてぇー、うお! なんだこれ?」


 フローラは体を伸ばしつつ土人形の存在に気が付く。


「ふん! どうだ、力作だぞ」


「これ………動くのか?」


「いや、動かない。動いたらいいんだけど」


 フローラは注意深く土人形を観察していた、うんうん、オレの力作だから思う存分見てくれ。


「すっげぇー魔力込めたな? なんで魂入れないんだ」


「魂? それ入れたら動くのか?」


 フローラはさも不思議そうに言って来るがオレには意味が分からなかった。

 魂? そんなものどうやって入れたらいいんだ? そこら辺の死霊系統の魔物でもぶちこめばいいのか? でも死霊系統の魔物なんていないし。


「いや、普通は人間の魂だけを召喚したりするんだけど、召喚出来なかったらただの土と同じだな」


「召喚かぁ~………ん? まてよ」


 オレはあることを思いだし急いで自分の能力スキルを確認する。




 《個体名:三山 利久人

 種族:異端の半吸血鬼アウトサイド・ハーフヴァンパイア

 種族能力:恐怖支配 A 殺気凶悪化 A

 身体能力増加 S 憎悪倍加 S


 個体能力:斬撃耐性 A 打撃耐性 S

 短刀術 SS 切断耐性 B 剣術 A


 解放能力:魔法多重起動、魔力操作


 魔物能力 ドレインタッチ 水流操作 

 剛力 聴覚鋭敏 糸操作

 糸強化 毒付与 毒生成 糸生成 麻痺毒付与

 自動MP回復 悪魔召還 天眼 再生 硬化 吸収 奮戦 自動HP回復 超再生 成長 闇の祝福


 マジックアイテム能力 ステイタス閲覧 能力閲覧 火炎創造 致命傷の盾 MP小増加 特定転移


 行使可能魔法

 初級 火炎魔法(ファイヤーボール、火種生成など)

 中級 火炎魔法(フレイムボール、フレイムサークル、フレイムランス)

 初級 大地魔法(アースアロー、アースランス、アースソード、アースウォール、アースバインド)

 中級 回復魔法(傷の治療、毒の治療)


 所持魔眼:ハイリーディングアイ

 効果、視認した物質の名称、事柄を読み取る、魔法の本質を見抜き、解読、理解

 動きを読み取り

 思考を読み取り


 上位能力:理解者

 理解した物体、魔物の特徴やスキルをコピーすることができる(一つの物体からは一つだけ、魔物のスキルも同様で一つだけ) 


 獲得能力 土人形作成クエリイト・ゴーレム(込める魔力の量で性能が変わる土人形

 また、術者の能力スキルを引き継ぎことが多い) 》

 

 やはりあった! 悪魔召喚、これがあればこのゴーレムも動くようになるのではないだろうか!

 そういえば、バルムンクを召喚したゴブリンが持っていた能力スキルをコピーしたんだった。

 今まで、なんだかんだ忙しくて試す機会が無かったし、丁度いいしやってみるか。

 あっまてよ………悪魔召喚って実体の悪魔が出てくるんじゃないのか……まさかここまでやってダメだったとか言われたら泣くで。



「悪魔召喚ならあるんだが」


「悪魔召喚! またレアな能力スキルを………う~ん、大丈夫じゃないか、悪魔召喚は確か実体のない者が大半召喚されるらしいし。

 レアな能力スキルだし詳しく知っている奴なんてすくねぇーよ。」


 きた! だけど、悪魔召喚するほどMP残っていない。

 動くって分かっただけでもかなりの成果だ。

 よし! MPが回復し次第悪魔を召喚し、ゴーレムに憑依? させてみよう。


「MPがもうねぇー………寝る。

 起きたら悪魔召喚すっから」


「あっ………まぁ~いいや。おやすみ」


 フローラが何か言い終える前にオレは横になり重たい目を閉じる。


 ―――――――――――――――――――――


「起きろ、もうMPは回復しただろ。

 はやくやろうぜ」


 フローラの声によって起こされたオレは目を擦りながら目覚める。


「ん~なんだよ、はやくねぇーか」


「もう十分だろ! 6時間も寝れば、それよりさ、はやくやろうぜ」


 なぜか、フローラはもう待ちきれないとばかりに囃し立ててくる。


「なんでそんなに急がす?」


「気が付いたんだよ! お前が戦えなくなったら私が行かなくてもよくよくなるじゃねぇーか! さっ速くやろうぜ」


「あっはい」


 あまりの自分の願望、駄々漏れで反応に困ってしまった。

 まぁーあのゾンビ野郎とは出来れば戦いたくないのは分かるが………それにしても願望駄々漏れじゃないですか、フローラさん。


 そんなわけでオレは今まで使ったことのない能力スキルを試そうとしている訳だが………変なやつ来ないよな? とりあえずやってみるか。


「悪魔召喚デーモン・サモン」


 良かった回復した魔力が半分程だったが、回復した8割ほどの魔力を使い魔法が起動した。

 かなり中2っぽい名前の魔法だがどうなるのだろう………。

 魔法を使った瞬間からオレを中心とした半径1メートルが真っ黒な光に包まれる。


 《お呼びですか? 主よ》


 声は少し中性っぽいけど何処か女よりの声だった、姿はおぼろげだがなんとか視認できる。


「あ、あぁ」


 《いかなる用でお呼びに? 戦闘ですか?

 殺戮ですか? それとも恋人になれと?》


「なっ! なにをいっている!?」


 自分の顔が暑くなっているのが分かる………うっわ、だせぇーな、だけど今回のは仕方ない。

 どんな奴が来るかと思えばこんな奴だなんて………魔将にもなったのにこれじゃーな。


 《そんなに照れなくても……言ってるこっちまで恥ずかしいですよ。

 で、今回は如何なる用で?》


「………。 オレが作った土人形ゴーレムに憑依して戦闘に加わって欲しいんだが

 大丈夫か」


 《それは厳しいかと………私程の者が入る器となると上位悪魔級の悪魔が作ったものでなくてはなりません》


 上位悪魔級か………オレは魔将級になっているが上位悪魔級ってのがどの位にいるのか把握できてないんだよな。

 ここはこいつに聞いてみるか。


「なぁ~その、なに級ってどれくらいのがあんの?」


 《そんなことも知らないとは………今回の主はハズレですかね………はぁ~

 まぁ~良いでしょう

 魔神級

 真の魔王級

 魔王級

 魔将級

 上位悪魔級

 中位悪魔級

 下位悪魔級

 使い魔級です。

 主様は?》


 まって! 聞いただけてこんなに言われるの! いやいや知らなきゃ恥ずかしいレベルのことかも知れないけど、異世界から来たオレが知らなくてもしょうがなくない? オレがおかしいの?


「あのさ………オレ一応、魔将級なんだけど」


 《そんなはずは…………あれ? おっかしいなぁ~………えっ? 大変失礼な態度を取ってしまい申し訳ありませんでしたぁー》


 うるさ! いや、まぁ~オレも知らなかったし、しょうがないと思うよ。うん

 別に怒ってないし………少し悲しくなっただけだし。


「気にしなくてもいいよ………それよりオレの作った土人形ゴーレムに入ってくないか?」

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